F堂事件 判例

神戸地方裁判所姫路支部平成28年9月29日判決
時間外労働割増賃金の請求において早出分は認められないとした事案

court

〈事案の概要〉

被告株式会社に勤務していた原告が未払いの時間外労働に対する賃金を請求した事件。
原告はタイムカードを基準として時間外割増賃金を請求した。被告会社は早出部分については労務の提供を義務付けていないと主張し争った。

〈判旨〉

「労働基準法上の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、この労働時間に該当するか否かは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、雇用契約、就業規則、労働契約等の定めの如何によって決定するものではないと解すべきである。」

「所定に始業時刻前のタイムカードの打刻時間を始業時間として主張する場合(早出残業)には、使用者が明示的には労務の提供を義務付けていない始業時刻前の時間が、使用者から義務付けられ又はこれを余儀なくされ、使用者の指揮命令下にある労働時間に該当することについての具体的な主張立証が必要であると解するのが相当である。

〈解説〉

本件は早出残業部分についての残業代請求に対して、タイムカードのみでは業務を行っていたとは認めることはできず、原告の請求する残業代は過大であるとして、請求のおよそ5割を削減した事案です。

終業時刻後の残業についてはどのように業務を行っているかがわかることが多いとおもいますが、始業時刻前ですと上司などが出勤しておらず早出した後始業時刻まで何をしているかが見えないことが多いです。

本件では、始業時刻前に出勤していることが多かった原告に対して、会社が日報を提出するように指示したが提出されていなかったなど、業務を行っているか不明であること、仕事がないのであれば早く来なくてよいと告げたこと、業務命令がなかったことなどから、タイムカードが打刻されていても残業であるとは認めないとしました。

ラッシュをさけて早出している従業員などもいることがあるかもしれませんが、始業時刻近くまではタイムカードを打刻しないようにしたり、勤怠管理ソフトを導入することが訴訟の防衛策として考えられます。

仮にタイムカードが打刻されているようであれば、早朝の業務内容の報告を求めるなどして、残業の対象となるかを確認する対策をとる事も重要です。