〈事件名〉X学園事件 判例

東京地方裁判所平成28年11月30日判決
定年後の再雇用契約が締結されることに対する合理的な期待があったとして、再雇用契約を締結しなかったことが違法であるとされた事例

〈事案の概要〉

原告は被告大学に転職する際に、定年は65歳であるがその後70歳まで1年ごとに再雇用で更新されると聞いたことから、通勤時間が長くなること等を考えたが転職を決めた。平成18年に転職したがその後大学が少子化による学生減少などの影響から定年の運用を厳格化し、雇用の延長をできるだけ認めない運用に切り替えた。平成26年に65歳となったXは再雇用を希望したが再雇用されず、平成26年度終了とともに定年退職とされた。

〈判旨〉

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「労働者において定年時、定年後も再雇用契約を締結することで雇用が継続されるものと期待することについて合理的な理由があると認められる場合、使用者において再雇用基準を満たしていないものとして再雇用をすることなく定年により労働者の雇用が終了したものとすることは、他にこれをやむを得ないものとみるべき特段の事情がない限り、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められず、この場合、使用者と労働者との間に、定年後も就業規則等に定めのある再雇用規定に基づき再雇用されたのと同様の雇用関係が存続しているものとみるのが相当である。」と最高裁の規範を示し、本件では再雇用の期待があったとした。

〈解説〉

定年後の再雇用を定めている企業は多いです。本件では、定年が65歳とされている大学でしたが、そのあとの再雇用についての判断となります。

本件では就業規則に再雇用の規定があることだけではなく、採用時に定年後の再雇用があるものと期待させたか否か、そして、期待があったとした場合に、再雇用を拒む相当な理由があったのか、を判断した事案です。

論理的には最高裁の決定に従ったものであるから事実認定が参考となります。
本件では合理的期待を持ったとの認定をした根拠として、転職を決めるときに再雇用されるだろうとの説明、また、再雇用を希望した65歳定年の者が再雇用されてきたこと、などを挙げています

大学としては、教員含め従業員の人数を絞ることで経営を安定させようとしていたことは認められますが、採用時にはこの方針は採られておらず、かつ、方針転換を周知していなかったことから、再雇用をすべきで、再雇用しない相当な理由が必要となりますが、今回はその理由がないと判断されました。

本件では採用時の説明と異なることになった点が問題となりましたが、経済の動きで採用時と異なる状況になることは一般的に発生し得ますから事前の説明は非常に重要です。