懲戒処分の程度と指針

懲戒処分を行うには就業規則等できちんと定めておく必要があります。
例えば「遅刻を3回したら半日分の給与を給与から減額する」等の規定です。

これらの規定がない限り、例え、毎日遅刻をして雇用が、仕事の途中でパチンコに行こうが懲戒処分を行うことはかなり難しくなります。

いや、懲戒を行うことは可能かもしれませんが、裁判で争ったときにそれらの懲戒処分が無効となり、過去にさかのぼって減額した給与、不利益を被った程度に応じた損害を賠償する義務が発生するかもしれない
といったほうが正しいのかもしれません。

ただし、就業規則に定めたからと言って
遅刻をしたら懲戒解雇などということはできません。
それらの程度を判断するうえでは、下記の人事院の懲戒処分の指針を基準に考えると非常に分かり易くなります。
御社の懲戒の規定を作る際はこれを参考にされておつくりになることをお勧めいたします。

人事院の懲戒処分の指針

第1 基本事項
本指針は、代表的な事例を選び、それぞれにおける標準的な処分量定を掲げたものである。

具体的な量定の決定に当たっては、

  • 非違行為の動機、態様及び結果はどのようなものであったか
  • 故意又は過失の度合いはどの程度であったか
  • 非違行為を行った職員の職責はどのようなものであったか、その職責は非違行為との関係でどのように評価すべきか
  • 他の職員及び社会に与える影響はどのようなものであるか
  • 過去に非違行為を行っているか

等のほか、適宜、日頃の勤務態度や非違行為後の対応等も含め総合的に考慮のうえ判断するものとする。
個別の事案の内容によっては、標準例に掲げる量定以外とすることもあり得るところである。

なお、標準例に掲げられていない非違行為についても、懲戒処分の対象となり得るものであり、これらについては標準例に掲げる取扱いを参考としつつ判断する。

第2 懲戒処分の種類
国家公務員法第82条・地方公務員法第29条の規定に基づき、職員の行った非違行為に対して行う次の処分

  • 免職・・・職員を懲罰として勤務関係から排除する。
  • 停職・・・職員を懲罰として職務に従事させない。
  • 減給・・・職員の給料を減給して支給する。
  • 戒告・・・職員の非違行為の責任を確認し、その将来を戒める。
第3 標準例

1 一般服務関係

(1) 欠勤
 ア 正当な理由なく10日以内の間勤務を欠いた職員は、減給又は戒告とする。
 イ 正当な理由なく11日以上14日以内の間勤務を欠いた職員は、停職とする。
 ウ 正当な理由なく15日以上の間勤務を欠いた職員は、免職とする。

(2) 遅刻・早退
 正当な理由なく勤務時間の始め又は終わりに繰り返し勤務を欠いた職員は、戒告とする。

(3) 休暇等の虚偽申請
 特別休暇等について虚偽の申請をした職員は、減給又は戒告とする。

(4) 勤務態度不良
 勤務時間中に職場を離脱する等職務を怠り、公務の運営に支障を生じさせた職員は、減給又は戒告とする。

(5) 職場内秩序びん乱
 ア 暴行により職場の秩序を乱した職員は、停職又は減給とする。
 イ 暴言により職場の秩序を乱した職員は、減給又は戒告とする。

(6) 虚偽報告
 事実をねつ造して虚偽の報告を行った職員は、減給又は戒告とする。

(7) 違法な職員団体活動
 ア 同盟罷業、怠業その他の争議行為を行った職員は、減給又は戒告とする。
 イ 同項に規定する違法な行為を企て、又はその遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおった職員は、免職又は停職とする。

(8) 秘密漏えい
 職務上知ることのできた秘密を漏らし、公務の運営に重大な支障を生じさせた職員は、免職又は停職とする。

(9) 個人の秘密情報の目的外収集
 その職権を濫用して、専らその職務の用以外の用に供する目的で個人の秘密に属する事項が記録された文書等を収集した職員は、減給又は戒告とする。

(10) 政治的目的を有する文書の配布
 政治的目的を有する文書を配布して職員は、戒告とする。

(11) 兼業の承認等を得る手続きのけ怠
 営利企業の役員等の職を兼ね、若しくは自ら営利企業を営むことの承認を得る手続又は報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員等を兼ね、その他事業若しくは事務に従事することの許可を得る手続を怠り、これらの兼業を行った職員は、減給又は戒告とする。

(12) セクシュアル・ハラスメント
 ア 暴行若しくは脅迫を用いてわいせつな行為をし、又は職場における上司・部下等の関係に基づく影響力を用いることにより強いて性的関係を結び若しくはわいせつな行為をした職員は、免職又は停職とする。
 イ 相手の意に反することを認識の上で、わいせつな言辞、性的な内容の電話、性的な内容の手紙・電子メールの送付、身体的接触、つきまとい等の性的な言動(以下「わいせつな言辞等の性的な言動」という。)を繰り返した職員は、停職又は減給とする。
 ウ イの場合においてわいせつな言辞等の性的な言動を執拗に繰り返したことにより相手が強度の心的ストレスの重積による精神疾患に罹患したときは、当該職員は免職又は停職とする。
 エ 相手の意に反することを認識の上で、わいせつな言辞等の性的な言動を行った職員は、減給又は戒告とする。
  (注)処分を行うに際しては、具体的な行為の態様、悪質性等も情状として考慮のうえ判断するものとする。

2 公金官物取扱い関係

(1) 横領
 公金又は官物を横領した職員は、免職とする。

(2) 窃取
 公金又は官物を窃取した職員は、免職とする。

(3) 詐取
 人を欺いて公金又は官物を交付させた職員は、免職とする。

(4) 紛失
 公金又は官物を紛失した職員は、戒告とする。

(5) 盗難
 重大な過失により公金又は官物の盗難に遭った職員は、戒告とする。

(6) 官物損壊
 故意に職場において官物を損壊した職員は、減給又は戒告とする。

(7) 出火・爆発
 過失により職場において官物の出火、爆発を引き起こした職員は、戒告とする。

(8) 諸給与の違法支払・不適正受給
 故意に法令に違反して諸給与を不正に支給した職員及び故意に届出を怠り、又は虚偽の届出をするなどして諸給与を不正に受給した職員は、減給又は戒告とする。

(9) 公金官物処理不適正
 自己保管中の公金の流用等公金又は官物の不適正な処理をした職員は、減給又は戒告とする。

(10) コンピュータの不適正使用
 職場のコンピュータをその職務に関連しない不適正な目的で使用し、公務の運営に支障を生じさせた職員は、減給又は戒告とする。

3 公務員倫理関係

(1) 収賄
 職務に関し賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をした職員は、免職とする。

(2) 利害関係者からの利益供与
 利害関係者から金銭・物品の贈与、飲食・遊戯・旅行等の接待、紹介・仲介・斡旋等の便宜供与を受けた職員は、免職、停職、減給又は戒告とする。

4 公務外非行関係

(1) 放火
 放火をした職員は、免職とする。
(2) 殺人
 人を殺した職員は、免職とする。

(3) 傷害
 人に身体を傷害した職員は、停職又は減給とする。

(4) 暴行・けんか
 暴行を加え、又はけんかをした職員が人を傷害するに至らなかったときは、減給又は戒告とする。

(5) 器物損壊
 故意に他人の物を損壊した職員は、減給又は戒告とする。

(6) 横領
 自己の占有する他人の物(公金及び官物を除く。)を横領した職員は、免職又は停職とする。

(7) 窃盗・強盗
 ア 他人の財物を窃取した職員は、免職又は停職とする。
 イ 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した職員は、免職とする。

(8) 詐欺・恐喝
 人を欺いて財物を交付させ、又は人を恐喝して財物を交付させた職員は、免職又は停職とする。

(9) 賭博
 ア 賭博をした職員は、減給又は戒告とする。
 イ 常習として賭博をした職員は、停職とする。

(10) 麻薬・覚せい剤等を所持又は使用
 麻薬・覚せい剤等を所持又は使用した職員は、免職とする。

(11) 酩酊による粗野な言動等
 酩酊して、公共の場所や乗物において、公衆に迷惑をかけるような著しく粗野又は乱暴な言動をした職員は、減給又は戒告とする。

(12) 淫行
18歳未満の者に対して、金品その他財産上の利益を対償として供与し、又は供与することを約束して淫行をした職員は、免職又は停職とする。

(13) 痴漢行為
 公共の乗物等において痴漢行為をした職員は、停職又は減給とする。

5 交通事故・交通法規違反関係

(1) 飲食運転
 ア 酒酔い運転をした職員は、免職とする。
 イ 酒気帯び運転をした職員は、免職又は停職とする。
 ウ 飲酒運転(酒酔い及び酒気帯び運転)であることを知りながら同乗した職員、又は飲酒運転となることを知りながら飲酒を勧めた職員、又は飲酒運転であることを知りながら容認した職員は、免職、停職又は減給とする。

(2) 飲酒運転以外での交通事故(人身事故を伴うもの)
 ア 人を死亡させ、又は重篤な傷害を負わせた職員は、免職、停職又は減給とする。この場合において、事故後の措置義務違反をした職員は、免職又は停職とする。
 イ 人に傷害を負わせた職員は、減給又は戒告とする。この場合において、事故後の措置義務違反をした職員は、停職又は減給とする。

(3) 交通法規違反
 著しい速度超過等の悪質な交通法規違反をした職員は、停職、減給又は戒告とする。この場合において、物損事故を起こし事故後の措置義務違反をした職員は、停職又は減給とする。

6 監督責任関係

(1) 指導監督不適正
 部下職員が懲戒処分を受ける等した場合で、管理監督者として指導監督に適正を欠いていた職員は、減給又は戒告とする。

(2) 非行の隠ぺい、黙認
 部下職員の非違行為を知得したにもかかわらず、その事実を隠ぺいし、又は黙認した職員は、停職又は減給とする。

第4 その他
職員の行った非違行為のうち、その態様等が特に軽微であり、懲戒処分に至らないものについては、当該非違行為を行った職員に対し○○○○職員の訓戒等の措置に関する要綱で定める措置を行うことができるものとする。なお、措置の種類は、対象となる行為の程度に応じ、重いものから順に次の通りである。

  • 訓戒
  • 文書厳重注意
  • 口頭厳重注意
第5 報告義務

飲酒運転、人身事故をともなう交通事故、著しい速度超過等の悪質な交通法規違反等を行った職員は、所属長、局室総務担当課を通じて人事課へ報告を行うこととする。
悪質な交通法規違反とは、原則として道路交通法施行令別表2の違反行為に付する点数が6点以上の行為とする。
なお、報告義務を怠った場合は、処分量を加重するものとする。

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