時間外労働の限度基準
「時間外労働・休日労働とは?」・「時間外・休日労働協定による場合」で三六協定を締結すれば、時間外に労働させることができることを解説いたしました。
しかし、この延長できる時間については上限が決められています。
期間 | 限度時間 | |
---|---|---|
1年単位の変形労働時間 以外の場合 |
変形期間3ヶ月を超える 1年単位の変形労時間制の場合 |
|
1週間 | 15時間 | 14時間 |
2週間 | 27時間 | 25時間 |
4週間 | 43時間 | 40時間 |
1か月 | 45時間 | 42時間 |
2か月 | 81時間 | 75時間 |
3か月 | 120時間 | 110時間 |
1年 | 360時間 | 320時間 |
しかし、次に掲げる事業に関しては時間外労働の限度時間は適用しないことになっています。
- 工作物の建設等の事業
- 自動車の運転の業務
- 新商品、新技術等の研究開発の業務
- 季節的要因等により事業活動、業務量の変動が著しい事業業務
- 又は公益上の必要により集中的な作業が必要とされる業務だと厚生労働省労働基準局長が認めたもの
また、一定の有害業務についても2時間を超えてはならないと決められています。
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時間外・休日労働協定による場合
三六協定の提出
三六(サブロク)協定について解説させていただきます。
なぜこのような協定が必要になるのかは、「時間外労働・休日労働とは?」で解説させていただきました。
そもそも、この三六協定を締結し、労働基準監督署に提出がされていないと、時間外・休日労働をさせることができないのですが、
この協定を出し忘れている施設・事業所が意外と多く、
調査があった際には、かなりの確率で是正勧告を受けることになります。
もし、まだ提出されていない事業所様がいらっしゃれば、今すぐ提出されることをお勧めいたします。
三六協定では以下の事項について所定の様式で提出する必要があります。
- 時間外又は休日労働させる必要のある具体的な事由
- 業務の種類
- 労働者の数
- 1日及び1日を越える一定期間について延長できる時間
- 有効期間
三六協定の有効期間
三六協定の有効期間は、1年です。
三六協定は、ほかの協定とは異なり自動更新とすることができません。そのため、有効期間中に毎年労働基準監督署に提出する必要がございます。
うっかり・・・
で、是正勧告を受けるのは避けたいところです。
有効期間は気を付けましょう
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所定労働時間と法定労働時間の違い
これもよくあるご質問の一つです。
簡単にご説明すると、所定労働時間は、会社が定めた労働時間数で、法定労働時間は、国が法律で定めた労働時間数を指します。
具体例を使ってお話ししてみたいと思います。
ある会社は、一日7時間の労働時間と定めていました。朝は9時から始まってお昼に1時間の休憩時間を取り、夜は5時に終了します。
この会社の所定労働時間は、7時間ということになります。
一方、法定労働時間は、法律で定めた時間になります。
労働基準法では1日当たりは8時間となっていますので、法定労働時間は、8時間となるわけです。
なぜ、この所定労働時間と法定労働時間の違いを取り上げるのかというと、残業代の計算の部分で大きな誤差が出てくるためです。
時間外労働については、時間外労働・休日労働時間とは?の部分でお話ししたいと思います。
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時間外労働・休日労働とは?
時間外労働とは?
時間外労働とは、労働基準法で定められた法定労働時間(1日8時間、1週40(又は44)時間)を超えて働いた労働時間のことを指します。
ここで、所定労働時間と法定労働時間の違いを理解する意味が出てきます。
例えば、所定労働時間が1日7時間の事業所の場合、
1日8時間を超えて働いた場合の労働時間は、時間外労働に当り割増賃金の対象になりますが、
7時間を超え8時間以下の労働時間については時間外労働にはあたらず、
割増賃金の対象にはなりません。
つまり、25%の割増賃金を支払う必要がない ということです。
ただし、7時間に対してのみ給料が支払われているわけですから、1時間分の通常の賃金は支払う義務が発生します。
また、時間外労働は、日、週で計算をしますので、給与計算の際はどの部分が時間外労働になっているのかをきちんと判断しないと、
過払い
未払い
のリスクを負うことになりますので、注意が必要です。
休日労働とは?
休日労働とは、労働基準法で定められた法定休日に働いた労働日のことを指します。
労働基準法では、最低週に一度以上の休日を与えることを義務付けています。
この使用者に義務付けている休日のことを法定休日と呼びます。
例えば、週休2日制を導入している企業の場合、
2日の休日のうち1日は法定休日となりますが、
労働基準法の最低基準を超えて与えているもう一日の休日は所定休日と呼び、
たとえ休日労働をさせても休日の割増賃金を支払う必要がないことになります。
では、土日がお休みだとする場合、どちらが法定休日でどちらが所定休日なのでしょうか?
これは、会社が独自で定めることができます。
こういった不明な部分は、きちんと就業規則で定める必要がございます。
労使間のトラブルとは、こういった単純な部分の労使の誤解が発端となっているようなケースも多々ありますので、取り扱いには気を付けたいところです。
時間外・休日労働が許される場合とは?
労働基準法では、
「労働者に、休憩時間を除き一週間について週40時間を超えて、労働させてはならない」とし、
「一週間の各日については、休憩時間を除き一日について8時間を超えて、労働させてはならない」
としています。
つまり、この時間を超えて働かせることは減速できないということになっています。
しかし、現実的には、お客様の要望に応えたり、サービス終了後の事務処理や、後片付けなどで決められた時間をオーバーして働くこともあると思います。
そういった場合は、一定の手続きを踏むことで例外措置として時間外に労働させて良いことになります。
つまり
- 災害その他避けることのできない事由(行政官庁の許可が必要)
- 公務のため
- 三六協定(時間外労働・休日労働に関する労使協定)を締結・届出
の場合を除き、使用者は一日8時間を超えて労働者を労働させることはできません。
ほとんどのケースでは、3番目の三六協定を締結し、労働基準監督署へ届出することになります。
協定の内容については「時間外・休日労働協定による場合」で解説いたします。
時間外労働が翌日に及んだ場合の取り扱い
夜の10時までの所定労働時間の方が残業をして翌日1時まで勤務した場合の取り扱いはどうなるのでしょうか?
翌日勤務?当日の残業?
労働基準法第32条第1項では、1週間の労働時間を40時間までと定め、第2項で1日の労働時間を8時間以内と定めています。
そして行政通達では、「1週間とは、就業規則その他別段の定めがない限り、日曜日から土曜日までのいわゆる暦週をいうものである」とし、「1日とは、午前0時から午後12時までのいわゆる暦日をいうものである」としています。
時間外労働が継続して翌日に及んだ場合、 同じ行政通達では、「継続勤務が2暦日にわたる場合には、たとえ暦日を異にする場合でも1勤務として取り扱い、当該勤務は始業時刻の属する日の労働として、当該「1日」の労働とすること」としています。
したがって、残業が翌日に及んでも、前日の労働時間が継続しているとして取り扱い、それが8時間を越えていれば、残業として取り扱うこととなります。
ただし、残業がさらに継続して翌日の所定労働時間に及んだ場合は、所定労働時間の始期までの超過時間に対しては、割増賃金を支払わなければなりませんが、翌日の所定労働時間については必要ないことになります。
翌日が法定休日の場合は取り扱いが違ってきますので注意が必要です。
法定休日とは原則、午前0時から午後12時までの暦日とされています。
したがって、 法定休日の前日の勤務が延長されて法定休日に及んだ場合及び法定休日の勤務が延長されてさらに翌日に及んだ場合のいずれの場合においても、 法定休日の日の午前0時から午後12時までの時間帯に労働した部分が3割5分以上の割増賃金の支払いを要する残業となります。
また、午後10時から午前5時までであれば、もちろん深夜割増も加算されます。
休日の夕方7時に出社して翌日通常勤務の終了まで働いた。割増賃金の取扱いは?
この場合は、以下のように計算することになります。
- 午後7時~午後10時までの3時間は、3.5割の割増賃金(休日割増3.5割)
- 午後10時~午前0時までの2時間は、6割の割増賃金(休日割増3.5割+深夜割増2.5割)
- 午前0時~午前5時までの5時間は、2.5割の割増賃金(深夜割増2.5割)
- 午前5時~翌日始業時刻(午前8時)までの4時間は、通常の賃金(割増なし)
- 午前8時~正午までの4時間は、通常の賃金(割増なし)
- 午後1時~午後5時までの4時間は、2.5割の割増賃金(時間外割増2.5割)
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労働時間の適正把握のための基準
皆様の事業所では、労働時間をどのように確認されていますでしょうか?
- 「タイムカードで労働時間を把握する必要がありますか?」
- 「うちは始業時間が9時からなので、社長が9時と書き入れていますが、問題ありますか?」
等といったご質問をよく受けます。
国から「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」というものが出されていますが、その中では以下のように記載されています。
労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準
(1)始業・終業時刻の確認及び記録
使用者は、労働時間を適正に管理するため、労働者の労働日ごとの始業・ 終業時刻を確認し、これを記録すること。
(2)始業・終業時刻の確認及び記録の原則的な方法
使用者が始業・終業時刻を確認し、記録する方法としては、原則として次のいずれかの方法によること。
ア 使用者が、自ら現認することにより確認し、記録すること。
イ タイムカード、ICカード等の客観的な記録を基礎として確認し、記録すること。
(3)自己申告制により始業・終業時刻の確認及び記録を行う場合の措置
上記(2)の方法によることなく、自己申告制によりこれを行わざるを得ない場合、使用者は次の措置を講ずること。
ア 自己申告制を導入する前に、その対象となる労働者に対して、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うこと。
イ 自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施すること。
ウ 労働者の労働時間の適正な申告を阻害する目的で時間外労働時間数の上限を設定するなどの措置を講じないこと。また、時間外労働時間の削減のための社内通達や時間外労働手当の定額払等労働時間に係る事業場の措置が、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないかについて確認するとともに、当該要因となっている場合においては、改善のための措置を講ずること。
(4)労働時間の記録に関する書類の保存
労働時間の記録に関する書類について、労働基準法第109条に基づき、3年間保存すること。
(5)労働時間を管理する者の職務
事業場において労務管理を行う部署の責任者は、当該事業場内における労働時間の適正な把握等労働時間管理の適正化に関する事項を管理し、労働時間管理上の問題点の把握及びその解消を図ること。
(6)労働時間短縮推進委員会等の活用
つまり
- 使用者が目で見て確認して記録する。
- タイムカードやICカーで客観的に把握する
ことが求められていて、労働者の自己申告制とする場合でも、実態と合うかどうかを調査をする義務を使用者側に課しています。
こういったことを踏まえますと、タイムカードで把握するのが最も推奨されますが、それができない事業所におかれましては、使用者側が責任を持って管理する義務がある ということが言えます。
労働基準監督署の調査でも、労働時間の把握はしっかりと確認される部分なので、毎日きちんと管理しておきたい部分です。