正社員とパートタイム労働者の違い
雇われるときに正社員にしようかパートタイムにしようか悩まれるときもあるかと思います。
いずれにするほうがいいのかはケースバイケースなので、答えを出すのは非常に難しいのですが、
まずは違いを整理してみたいと思います。
正社員 | パートタイム | 業務委託・請負 | |
---|---|---|---|
期間 | 一般的に期間の定めなし | 長くても1年程度 | 契約しだい |
給与などの負担 | 社会保険料の負担が大きい | 労働条件次第で社会保険の加入義務がない | 請負代金のみ 保険料などの負担なし |
仕事量 | 大きい | 大きな仕事は任せにくい | 成果報酬 |
責任感 | 比較的醸成しやすい | 比較的醸成しにくい | 成果に対する報酬なので責任は生まれやすい |
忠誠心 | 生まれやすい | 生まれにくい | 生まれにくい |
雇用調整のしやすさ | 簡単にはできない | 比較的しやすい | 簡単 |
他にも色々な違いが見出されるとは思いますが、主なものは以上の通りです。
御社における状況を踏まえてどのような人材が必要なのかを考えてから採用しないと
「こんなはずじゃなかった・・・」
になってしまいますので、気を付ける必要があります。
正社員とパートの労務管理上の違い
上記の表を 「労務管理」 という視点でもう少し詳しくひも解いてみたいと思います。
つまりは、正社員とパートさんを実務上でどのように取り扱いを変えておけば問題がないのか?という視点です。
例えば、正社員とパートさん 仕事は全く同じだけど、働く時間数は少しだけ違う
この状態で、給料に倍ほど差がある場合は問題にはならないのでしょうか?
パート労働法とは
昨今のパートタイム労働者(短時間労働者)は、企業の主力となってきています。正社員と同等に活躍するパートタイマーも多く、その境目が非常に曖昧なのが現実です。
そこでパートタイマーの公正な待遇の実現を目指してできたのが、平成20年4月1日より改正施行された「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」、いわいる「パート労働法」です。
パート労働法の主な内容は次の5点です。
- 労働条件の文書交付・説明義務
- 均衡の取れた待遇の確保の促進
- 通常の労働者への転換の推進
- 苦情処理・紛争解決援助
- 事業主等支援の整備
「同視すべき労働者」とその対応
この法律のポイントは、「均衡の取れた待遇の確保の促進」といえます。
正社員と同じような仕事をしたり、同等の責任を負っているパートタイマーには、同等の待遇をしなければならないと定められています。パート労働法では、正社員と同等とみなされるパートタイマーのことを「正社員と同視すべき短時間労働者」と定義されており、同視すべき短時間労働者か否かの判断材料として、次の3つがあげられています。
- 職務の内容が同じであるかどうか
- 人材活用の仕組みや運用などが、全雇用期間と通じて同じであるかどうか
- 契約期間が実質的に無期契約であるかどうか
正社員とパートタイマーの役割と責任
(1)職務の内容が同じであるかどうか
これは、職務内容とその他、与えられている権限の範囲や成果への期待度などもあわ せて判断します。正社員とパート労働者が一見同じ仕事をしている場合でも、次のような場合は職務の内容が同じとは判断されないケースも出てきます。
- クレーム処理に関しては正社員は責任をもって対応しなければならないが、パート労働者は、正社員への取次ぎだけを行えばよいことになっている
- 正社員は部下、後輩の指導育成も行うが、パート労働者はその点に関して責任がない
- 正社員は高度な秘密情報を責任をもって取り扱うが、パート労働者は、そのような情報を扱うことはしない
- 業務以外のパート労働者のシフト作成や、シフトに空白が出来た場合の対応などを正社員が責任をもって行わなければならない(パート労働者には、シフトを埋めてもらうことをお願いはするが、強制はしない)。
- 正社員には残業の命令をだすが、パート労働者には残業の命令を出さない
(2)人材活用の仕組みや運用などが、全雇用期間と通じて同じであるかどうか
この部分がもっとも正社員とパート労働者との違いがでるのではないでしょうか?。例としては異動の有無があります。例えば、正社員は全国の支社への転勤があるが、パート労働者にはないといったケースです。また、正社員、契約社員、パート労働者などの区分がある場合、次のような区分をとっている場合がよくあります。
正社員・・・全国への転勤や出向命令に対して、正当な理由がない限りこれを拒むことができない。
契約社員・・・転居を伴わない転勤や出向に対しては、正当な理由がない限り、これを拒むことができない。
パート・・・原則として転勤や出向命令はださない。ただし、事前に時期と勤務地を本人に打診し、本人が了承した場合に限り、転勤や出向を行う。
※これらの区分は実態ではなく、就業規則等で明確に区分していることが大切です
(3)契約期間が実質的に無期契約であるかどうか
パート労働者は6ヶ月や1年で雇用契約を結んでいるケースが多いですが、何度も更新を繰り返して、実質的に正社員と変わらない安定的な働き方をしている場合、正社員と同じだと判断されます。たとえ契約書をきちんと毎回交わしていたとしても、実態での判断となるので注意が必要です。
これら、3つの事項がすべて正社員とかわらないと判断されるパートタイマーは、「正社員と同視すべき短時間労働者」とされ、賃金、教育訓練、福利厚生などの利用などの待遇について、差別的取り扱いをすることは禁止されています。
会社や管理職は、自社の正社員とパートタイマーの役割と責任をしっかりと整理し特にパートタイマーなどの非正社員には、会社が期待する役割と責任をしっかりと伝え、お互いの認識にズレがないようにしておくことが重要です。