労働時間の弾力的な運用

労働時間の規制に関しては、時間外労働・休日労働とは?で解説したとおり「休憩時間を除き、1週間について40時間(10人未満の介護施設や病院は44時間)、1日について8時間」が原則とされています。
しかし、施設、事業所、またはそのほかの業種の勤務態様の変化に対応できるように一定の基準をクリアしていれば、この8時間、40時間に縛られずにフレックスに労働時間を変更することが可能です。
この制度には、以下の制度があります。

変形労働時間制とは

一定の期間における1週当たりの所定労働時間の平均が、法定労働時間(40時間、44時間)を超えない場合には、その期間内の特定の週又は特定の日の所定労働時間が法定労働時間を上回っても、それを法定労働時間を超えたという取扱いをしないという制度です。

介護施設に導入可能なものは、以下の二つと思われます。

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労働時間の適正把握のための基準

皆様の事業所では、労働時間をどのように確認されていますでしょうか?

  • 「タイムカードで労働時間を把握する必要がありますか?」
  • 「うちは始業時間が9時からなので、社長が9時と書き入れていますが、問題ありますか?」

等といったご質問をよく受けます。

国から「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」というものが出されていますが、その中では以下のように記載されています。

労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準

(1)始業・終業時刻の確認及び記録
使用者は、労働時間を適正に管理するため、労働者の労働日ごとの始業・ 終業時刻を確認し、これを記録すること。
(2)始業・終業時刻の確認及び記録の原則的な方法
 使用者が始業・終業時刻を確認し、記録する方法としては、原則として次のいずれかの方法によること。
  ア 使用者が、自ら現認することにより確認し、記録すること。
  イ タイムカード、ICカード等の客観的な記録を基礎として確認し、記録すること。
(3)自己申告制により始業・終業時刻の確認及び記録を行う場合の措置
 上記(2)の方法によることなく、自己申告制によりこれを行わざるを得ない場合、使用者は次の措置を講ずること。
  ア 自己申告制を導入する前に、その対象となる労働者に対して、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うこと。
  イ 自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施すること。
  ウ 労働者の労働時間の適正な申告を阻害する目的で時間外労働時間数の上限を設定するなどの措置を講じないこと。また、時間外労働時間の削減のための社内通達や時間外労働手当の定額払等労働時間に係る事業場の措置が、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないかについて確認するとともに、当該要因となっている場合においては、改善のための措置を講ずること。

(4)労働時間の記録に関する書類の保存
 労働時間の記録に関する書類について、労働基準法第109条に基づき、3年間保存すること。
(5)労働時間を管理する者の職務
 事業場において労務管理を行う部署の責任者は、当該事業場内における労働時間の適正な把握等労働時間管理の適正化に関する事項を管理し、労働時間管理上の問題点の把握及びその解消を図ること。
(6)労働時間短縮推進委員会等の活用

つまり

  • 使用者が目で見て確認して記録する。
  • タイムカードやICカーで客観的に把握する

ことが求められていて、労働者の自己申告制とする場合でも、実態と合うかどうかを調査をする義務を使用者側に課しています。

こういったことを踏まえますと、タイムカードで把握するのが最も推奨されますが、それができない事業所におかれましては、使用者側が責任を持って管理する義務がある ということが言えます。

労働基準監督署の調査でも、労働時間の把握はしっかりと確認される部分なので、毎日きちんと管理しておきたい部分です。

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ホームヘルパーの労働時間とは?

ホームヘルパー(訪問介護員)さんの労働時間で注意しなければならないことが一点ございます。
それは、「移動時間の取り扱い」です。

介護サービスの利用者宅から次の利用者宅への移動時間ですが、その時間の自由利用が職員に保障されていないと場合については労働時間にあたります。
具体例を使ってご説明します。

自宅   ⇒ Aさん宅   移動時間は、通勤のため労働時間ではない
Aさん宅 ⇒ Bさん宅   移動時間は、労働提供ために必要な時間なので、労働時間
Bさん宅 ⇒ 会社     移動時間は、会社に戻る時間で労働時間
会社   ⇒ 自宅     移動時間は、帰宅のための時間なので、労働時間ではない

「お客様宅でサービスをしている時間しか給料を支払わない」等という行為は、法律に適合していない可能性が非常に高いので、不明な事業所様は一度専門家にご相談されることをお勧めいたします。

まずは、以下の点にご注意ください

移動時間中の給与について
上記のとおり、移動時間について無給でいる状態というのはサービス残業をさせていることになるのですが、「ヘルパー業務と同じ時間給を支払わなければならない」というわけではありません。
企業として業務内容に応じた給与を支払うという行為は何ら問題ございません。
ただし、最低賃金の絡み、給与を分けることの相当性、妥当性、明白性に注意することは必要です。また、ヘルパーさんに納得していただくことも大事です。
報告書を書く時間について
報告書は必ず提出していただくことと思います。その報告書を書く時間ももちろん労働時間に含まれます。そこで確認ですが、報告書はどこで書いてもらっているでしょうか?
会社に戻ってから?自宅からのFAX?
それによっても労働時間となる時間は大きく異なってくるでしょう。なぜなら会社に戻ってから報告書を提出するのであれば、最後のお客様のお宅から会社に戻ってくるまでの時間も労働時間に算定されるからです。
会社に戻ってくる必要がないのであれば、直帰してもらい自宅から報告書を送信してもらうことも検討していいのではないでしょうか?ただし、報告書を書く時間も労働時間だということを忘れないようにしなければなりません。就業規則できちんと定めておきましょう!
直帰に変更する際には、もう一点注意してほしいことがございます。
それは、「社員、ヘルパーさん同士のコミュニケーションが不足すること」です。
トラブルの大半がコミュニケーション不足に起因しているという事実を忘れてはなりません。コミュニケーションを充実させる方法を同時に考えるようにしてください。

ヘルパーさんの移動時間中賃金の未払いにならない裏技

上記の例を利用するだけでも移動中賃金の未払いは防ぐことは可能です。
しかし、残念ながら移動中賃金を支払うことで企業側の負担が増えることは否めません。
移動中賃金は負担せざるを得ないのでしょうか?

実はそうではありません。

合法的に負担を増やさずに移動中賃金の未払いを防ぐ方法があります。
やらなければならないことがありますが、特別なことは致しません。
就業規則もしくは労働条件通知書を変更することで可能になります。

近くレポートをお作りしまして皆様にダウンロードしていただけるようにしたいと思いますので、しばらくお待ちください。

お問い合わせいただけましたら、すぐにお伝えすることも可能ですので、お急ぎの方はお問い合わせください。

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労働時間とはどこをさす?

労働時間とは、どこの部分を指すのでしょうか?

  • 「8時始業なんですけど、50分から掃除をしています。掃除の時間は労働に当たりますか?」
  • 「お昼の電話当番がありますが、その時間は労働時間になりますか?」
  • 「夜勤で交代で3時間仮眠をとります。その時間は労働時間ですか?」
  • 「よく手待ち時間があって何もしない時間がありますが、これは労働時間ですか?」
  • 「お客さんのところからお客さんのところへ移動時間がありますが、これは労働時間ですか?」

などです。

いかがですか?皆さんは正解がわかりますか?

そもそも、労働時間とは、使用者または監督者の下で労働に服しなければならない時間を指しています。
休憩時間は労働時間に含まれません。休憩の間は監督者のもとで労働に服する義務が免除された時間だからです。

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1か月単位の変形労働時間制

介護施設・事業所で最も多く導入されている変形労働時間制が、1か月単位の変形労働時間制だといえるでしょう。
その理由は、夜勤等に対応するものとして一番適切なものだからです。

1か月単位の変形労働時間制の導入のために

1か月単位の変形労働時間制を採用するには、労使協定又は就業規則その他これに準じるものによって、この制度を採用することを規定する必要があります。
また、この定めを職員に周知しなければならなりません。
1ヶ月以内の一定の期間を平均し、1週間あたりの労働時間が法定労働時間以内であるならば特定の週に1週間40時間を越えて労働させてもよいという労働時間制度を勤務時間に取り入れる趣旨の規定を作ります。
1ヶ月のうちで比較的暇な時期と忙しくなる時期の繁閑の差がある場合
また、週1回の休日のほかに隔週で休日を設けている場合に有効です。

所定の労働時間の上限の計算式は次のとおりです。

40時間(※) × 変形期間の暦日数 / 7
※特例措置対象事業所は44時間

1ヶ月単位の変形労働時間制の場合の時間外労働とは

1ヶ月単位の変形労働時間制を採用している施設・事業所の時間外労働とは次の時間をいいます。

区分 時間外労働となる時間の範囲
1日について 労使協定又は就業規則、その他これに準じるものにより8時間を越える時間を定めた日はその時間
それ以外の日は法定労働時間を超えて労働した時間
1週間について 労使協定又は就業規則その他これに準じるものにより1週間の法定時間を超える時間を定めた週はその時間
それ以外の週は1週間の法定労働時間を超えて労働した時間
変形期間について 変形期間における法定労働時間の枠を超えて労働した時間

以上の3パターンで労働時間をチェックします。

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