2018/05/22
イクヌーザ事件 判例
イクヌーザ事件
・東京地方裁判所平成29年10月16日判決
・月80時間分の時間外労働を基本給に固定残業代として組み込んだ規定が有効とされた事例
事案の概要
XはY社に勤務していたが、基本給に時間外労働80時間までが固定残業代として組み込まれていた。退社後に固定残業代の定めは無効であるとして残業代を請求した事案である。
判旨
基本給に固定残業代が含まれることを「本件雇用契約書ないし本件年棒通知書で明示している上、給与明細においても、時間外労働時間数を明記し、80時間を超える時間外労働については、時間外割増賃金を支払っていることが認められ」時間外労働の賃金にあたる部分を明確に区分することができるようにしていたこと、固定残業代の対象となる時間数は告示により45時間とされていること、及び、過労死ラインとされる80時間の時間外労働となっていることについては、「労働者の健康上の問題があるとしても、固定残業代の対象となる時間外労働時間数の定めと実際の時間外労働時間とは常に一致するものではない」ことから、80時間の固定残業代の規定を有効とした。
解説
本件は告示で示されている45時間を超えた80時間(なお過労死ラインも80時間である)の時間外労働時間を固定残業代に組み込んでいることが問題とされた。
本件の会社では固定残業代を採用していたが、労働時間は管理しており、実際の労働時間を給与明細などに印字して渡していた。また雇用段階で説明も十分にしていたと判断されたものである。
一つの問題は告示を超え、過労死ラインの時間になっていることである。判決では健康上の問題が生じるとされる時間数であるが、実際に80時間の時間外労働が継続しているものではなく、80時間までは固定残業代で労働させることが可能であり、そのまま働かせていたというものではないとして、80時間の定めを公序良俗に反しないとした。
固定残業代を採用しても、通常労働時間と時間外労働時間の管理はしておかねばならないことである。また、45時間程度で規定を作ったほうが問題は生じにくい。