日本放送協会解職事件 判例

名古屋地方裁判所平成29年3月28日判決

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事案の概要

被告の従業員であった原告が、精神疾患により休職し、その疾病休職期間が満了したために解職された事案である。原告は解職の無効を主張するとともに、職務に耐えられるかの様子を見るために行ったテスト出勤期間が無給であったがこれは最低賃金を割っており違法であると主張した。ここではテスト出勤期間の賃金について取り上げる。

判旨

最低賃金法について「「労働基準法上の賃金、すなわち「労働の対価として使用者が労働者に支払う」ものに適用されることから、」「被告において、傷病により職務の遂行に支障があり、休職事由があるとして傷病休暇を命じられた職員について、無休休暇扱いが定められていること自体が直ちに最低賃金法に違反することにはならない」「傷病休職中にもかかわらず、労働基準法上の労働を行ったと認められる場合には、最低賃金法の適用がある」として、本件では最低賃金法違反はないと判示した。

解説

精神疾患による休暇制度や休職制度を採用している事業所は増えており、休職期間が満了したことによって解職や退職扱いとする規定を設けるケースも増えている。

本件では、休職期間が満了する前に、職務に復帰できるかを検討するための出勤期間を設けており、その様子をみて産業医などが復職の可否を判断する制度を設けていた。本件では復職は難しいということで解職となったが、解職を争うとともに、テスト出勤中の給与が支払われていないことを最低賃金法違反として争った。

このようなケースで給与の支払いをするとしている事業所もあると思われるが、満額ではなく、また、リハビリの一環として出勤して職場の雰囲気になじむという目的の場合、もともとの業務をさせることはあまりなく、職場になじむための軽作業を中心としたりすることがある。リハビリの一環である場合にも会社が給与を支払わねばならないとすることには釈然としない場合もありうる。

本件では、無休であってもリハビリなどの治療の一環と考えられる場合や、復職の可否を産業医が判断するために職場に来てもらっているようなケースで、対価を必要とする労働とは言えないとして最低賃金法の適用を否定している。就業規則などで無給の休職期間に復職のために行うテスト出勤で給与の支払いがない規定を設けるときの参考となる