H協同組合事件 判例 2018/06/01

大阪高裁平成28年2月3日
担当業務がなくなったことによる整理解雇

〈事案の概要〉

court

H協同組合は設立時に労働組合により業務妨害を受けたため、A労働組合に対応を相談し、適任者としてXを紹介された。その後、XはHの従業員として勤務するようになった。そして専務理事に就任した(業務は組合対応や事務作業を行っていた)。
Hは収入が少なく、出費のほとんどはXと事務職員Bの人件費であり、この支払も大きく負担となっていた。

後に労働組合との対応の必要性がなくなったため、専務理事の任期終了とともに、処遇が問題となり、いったん解雇予告を行った。しかし、A組合との団交で解雇予告を撤回し、給与を大幅にカット、今後Xの解雇に当たってはA組合と協議する、との取り決めを行った。平成27年10月10日付で経営悪化に伴う使用者都合解雇を行ったが、事前協議はされていなかった。

〈判旨〉

整理解雇の要件を充足するとしたうえで、相当性に関しては、事前協議が必要とされていたが、Xの「雇用から本件解雇予告に至る経緯や、解雇の必要性、合理性、過去回避努力、人選等について」Hが協議で一貫して主張する内容等「協議においてHが説明するであろう内容を知悉しており」交渉を行ってもその内容を承知していたことが推認できるので、事前協議を行わなかったとしても解雇は社会通念上相当なものではないとまでは言えない、として解雇を認めた。

〈解説〉

本件は、一審では解雇が無効とされていた事案です。事実関係は特に大きな違いがなくても、評価の点で判決の内容が異なる事例となっています。解雇に当たって事前協議を必要とするという取り決めがあった場合、通常は協議を行わないことは手続を踏んでいないと評価されることになり、相当性がないとされることが多いです。

本件では、担当する仕事がなくなったことが大きな理由で、他の業務があれば他の業務を担当してもらうことも可能でしたが、組合の経理などを行う職員がおり、それ以外の仕事がなかったことが解雇の理由となっています。

以前の解雇予告と今回の解雇は同じ理由に基づくもので、Hが説明する内容はA組合が十分に予測できたことから、事前協議をしてもしなくても結果は変わらないという評価で、事前協議がなかったことを考慮したとしても相当性があると判断されました。