2018/07/11
日本郵便(休職)事件 2018.6.20 判例
休職規程が期間雇用社員に存在しなくとも労働契約法20条に違反しないとした事例
東京地方裁判所平成29年9月11日判決
事案の概要
原告は日本郵政に期間雇用社員として8年8か月勤務していましたが、平成27年4月1日から1日も出勤していないこと、9月30日までに職場復帰の見込みがないとして雇止めをされました。これを違法であるとして訴えが提起された事例です。主張は病気などによる休職規程が期間雇用社員にないこと、雇い止めが権利濫用にあたるということ、でした。
判旨
「その職務内容は、役割の違いや責任の軽重等からして、管理職はもとより、それ以外の正社員とも自ずと異なるものであり、業務内容の一部に重なる部分があるとしても、全体としてみれば同一の労働を行っていると解することはできず、職務内容の変更や人事異動の有無においても大きく異なるものと解される。
また、正社員や無期転換社員については、長期的な雇用の確保という観点からいわゆる休職制度を設ける要請が大きいのに対し、期間雇用社員については、反復継続して雇用契約が更新されることにより、契約更新の期待に合理的な理由が認められるような場合であっても、使用者において、休職制度をもって、長期的な雇用の確保を図るべき要請は必ずしも高くないものと解される」
として請求を棄却しました。
解説
本件では、期間雇用社員が出勤できなくなったとして復職の可能性が明確ではないことから雇止めをした事案です。
正社員については休職制度を設けることがよくありますが、期間雇用社員に休職制度を設けている会社はあまりありません。もともと1年更新である場合などは休職中に期間が満了してしまうこともあり、休職制度を設けること自体を考えていないのが一般的ではないでしょうか?
本件は、休職制度がなく治療にかかる期間があったのに雇止めとなったことを争点とした珍しい事案です。
判決理由のように正社員と期間雇用社員は扱いがもともと異なり、期間の定めのない雇用契約では休職制度などを設けて復職の可否を検討する必要があるとされますが、期間の定めのある従業員にはそのような対応まではしていなくても違法ではないと判断されました。
妥当な結論ではないでしょうか?
なお、本件はこれに加えて雇止めが権利濫用かが問題となりましたが、これについても退職を避けるための対応に限界があることを指摘して権利濫用ではないとしました。本件の期間雇用社員は職種が限定されており、その職種につくことが病気ないしけがで困難となったため、他の部署に配置換えをしても仕事の内容が変わらないことが指摘されています。