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2023.11.16
解雇をすることの会社のデメリットとは
目次
解雇とは
解雇とは、会社側が一方的に申し出により、特定の従業員との労働契約を終了させる行為です。従業員の意思が介在する余地はありません。会社から解雇されると、従業員は一方的に従業員としての地位を失います。
普通解雇と懲戒解雇
解雇には、懲戒解雇、整理解雇、普通解雇といった3つの種類が存在します。懲戒解雇は、事業主が企業の秩序を乱した労働者に対して課す制裁罰です。就業規則に基づく処分の1つです。整理解雇は、経営難などにより従業員を減らす必要が生じた場合の解雇です。
懲戒解雇は、会社が、従業員との労働契約を一方的に解約する処分で、懲戒処分の中でも、もっとも重い制裁です。従業員が重大な職場規律違反・企業秩序違反などを犯した際に課されますが、もっと重い処分のため、この実施には強い制約があります。
普通解雇は従業員の能力不足や協調性の欠如、就業規則違反、余剰人員の整理の必要性等の理由で行われる解雇をいいます。どういったことが普通解雇に該当するのかについて就業規則の中で規定しておくことが重要です。
規定例 (普通解雇) 第〇条 従業員が次のいずれかに該当するときは、解雇することができる。 1 勤務成績又は業務能率が著しく不良で、向上の見込みがなく、他の職務にも転換できない等、就業に適さないと認められたとき 勤務状況が著しく不良で、改善の見込みがなく、従業員としての職責を果たし得ないと認められたとき 3 業務上の負傷又は疾病による療養の開始後3年を経過しても当該負傷又は疾病がなおらない場合であって、従業員が傷病補償年金を受けているとき又は受けることとなったとき(会社が打ち切り補償を支払ったときを含む。) 4 精神又は身体の障害については、適正な雇用管理を行い、雇用の継続に配慮してもなおその障害により業務に耐えられないと認められたとき 5 試用期問中又は試用期間満了時までに従業員として不適格であると認められたとき 6 第〇条に定める懲戒解雇事由に該当する事実があると認められたとき 7 事業の運営上のやむを得ない事情又は天災事変その他これに準ずるやむを得ない事情により、事業の継続が困難となったとき 8 事業の運営上のやむを得ない事情又は天災事変その他これに準ずるやむを得ない事情により、事業の縮小・転換又は部門の閉鎖等を行う必要が生じ、他の職務に転換させることが困難なとき 9 その他前各号に準ずるやむを得ない事情があったとき 2 前項の規定により従業員を解雇する場合は、少なくとも30日前に予告をするか又は予告に代えて平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払う。ただし、労働基準監督署長の認定を受けて第条に定める懲戒解雇をする場合及び次の各号のいずれかに該当する従業員を解雇する場合は、この限りでない。 1 日々雇い入れられる従業員(1か月を超えて引き続き雇用される者を除く。) 2 2か月以内の期間を定めて使用する従業員(その期間を超えて引き続き雇用される者を除く。)3 試用期間中の従業員(14日を超えて引き続き雇用される者を除<。) 3 第1項の規定により従業員を解雇する場合は、即時に解雇する場合を除いて、労働者の請求に基づき解雇の理由を記載した文書を交付する。 |
解雇をする際の会社側のデメリット
1 そもそも解雇が有効にならないことがある
社員を解雇にしなければならない理由があると思います。会社としては、それを総合判断して解雇にすることが妥当と判断したとは思いますが、この処分が解雇に相当するかどうか、社会通念上認められるかどうかは別になります。就業規則、その会社の労働慣行、他の会社と照らし合わせたときの妥当性などから解雇が有効か否かが判断されます。これは、普通解雇であっても懲戒解雇であっても同様です。
従業員から退職後に、監督署や弁護士からこの解雇について訴えがあった場合、解雇の妥当性を検証していくことになります。もしも、解雇が不当である という判断になった場合は、地位確認といい、従業員の解雇は取り消され、従業員としての立場が復帰されることになります。
取消しというのは、過去にさかのぼって処分がなかったことになりますから、解雇をしてから1年後に取り消し処分がなされると、この間の給与の支払いが必要となります。
2 解雇予告手当の支払い義務
解雇をする場合、通常、解雇予告する場合には30日前までに解雇することを従業員に伝えなければなりません。 解雇予告をしない場合には、解雇予告手当として30日分の給与を支払う必要があります。解雇予告手当の支払い義務は、労働基準法で規定されており、会社に課された法的義務です。解雇予告手当を支払わないことは労働基準法違反となり、使用者には、6か月以下の懲役、または30万円以下の罰金が科される可能性があります。解雇予告手当の支払い時期は、解雇を伝えた当日に解雇する場合(「即日解雇」といいます)は、その従業員の平均賃金の「30日分」を支払わなければなりません。
3 従業員からの訴訟リスク
1と重複しますが、解雇をした場合、従業員から訴訟を起こされるリスクがあります。いきなり訴訟となるケースは少なく、一般的に、弁護士などから解雇不当の申し出があり、その対応によっては訴訟に発展することになります。
申出の対応、訴訟については同様で、会社には一定の金銭の支払いや地位保全の必要性があるでしょう。
4 周りの従業員のモチベーションの低下
解雇の理由によっては、残った従業員のモチベーションが低下することも予期されます。「この程度のことで解雇されるのか」と思った従業員は、果たしてこの会社にこれからもい続けていいのだろうかと退職を考えるかもしれません。
会社が感知しないところで、従業員通しのSNSのグループがあることは多く、退職後もこのグループで情報交換していることも珍しくありません。一人の未払い残業請求から芋づる式に請求が来ることもこれが理由と考えられます。その場しのぎの対応をせず、会社の法整備の見直しが必要です。
5 一部の助成金の申請ができなくなる
従業員を解雇した場合、一部の助成金について、一定期間申請ができなくなることがあります。 例えば、キャリアアップ助成金などは、さかのぼって6か月間の間に会社都合の解雇をした場合は申請できません。
解雇をする際に気を付けなければならないこと
1 解雇に値する正当な理由があるか
労働契約法では、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と定めています(労働契約法第16条)。解雇には「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が要件として必要だということが分かります。
また、解雇は、就業規則上の根拠が必要と考えられます(労働基準法第89条)。その上で、解雇したいと考えている従業員が就業規則の記載(解雇事由)に該当することが必要になります。
例えば、ある従業員が3日間無断で欠勤したとします。
その会社の就業規則に、「7日以上の無断欠勤をしたときは解雇処分とする。」と規定されている場合、この解雇は有効となるでしょうか?
この場合、「7日以上の無断欠勤」には該当しませんので、「客観的合理性」がないと判断される可能性が非常に高いと考えられます。
それでも会ことをした場合は、従業員から不当解雇の申し出があり争った場合は、会社が負けて、処分の取り消しとなります。解雇は取り消され、従業員は会社に戻り、給与をさかのぼって全額支払うという結果になるでしょう。
2 適切な解雇の予告と手当の支払いができているか
「解雇予告」が適切になされたかどうかもとても重要です。
労働基準法では、使用者が労働者を解雇する日の30日前までに解雇日を特定して通知する必要があるとしています。また、解雇日までの日数が30日に満たない場合や解雇予告をしない場合には、その不足する日数分の「解雇予告手当」を支払わなければなりません(労働基準法第20条)。
たとえば、解雇予定日の10日前に解雇予告をした場合には、平均賃金の20日分以上の解雇予告手当の支払が必要であるわけです。
解雇予告手当の支払時期ですが、「法第20条の解雇予告に代わる30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)は、解雇の申し渡しと同時に支払うべきものである。」とされています。ただし、解雇の予告を解雇予告手当と併用する場合は、解雇予告手当の現実の支払は、解雇日までに行えばよいということになっています。
解雇予告手当の計算方法
平均賃金1日分は、次の式で求められます。
平均賃金1日分 = (算定事由発生日以前3カ月間の賃金の総額)÷(算定事由発生日3カ月間の総日数)
解雇予告期間に足りなかった日数は、次の式で求められます。
解雇予告期間に足りなかった日数 = 30日 - 解雇日までの期間。たとえば、解雇日の10日前に通知された場合は、30日から10日を差し引いて、残りの20日分で解雇予告手当を計算します。すなわち、平均賃金日額に20日を乗じた金額が解雇予告手当として支払われます。
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