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2023.11.21
130万円の壁、被扶養者の認定に関するよくある質問
厚生労働省から発表されている「事業主の証明による被扶養者認定Q&A」を少しわかりやすくまとめております。
テレビや報道で情報だけが先行し、何しろわかりにくいこの制度。結局何をどうすればいいのかをまとめていきたいと思います。
目次
◆注意! 今回のテーマはあくまで社会保険の被扶養者についてです
よくご質問にあるのですが、この被扶養者の認定うんぬんは、あくまで社会保険の被扶養者の認定の基準の話です。ちょうど年末調整が迫っているせいもあるでしょうが、所得税の扶養の範囲とは関係がありませんので、注意が必要です。
◆本来の被扶養者の範囲とは
まずは、一般的な被扶養者の範囲を整理してみましょう。
健保協会のHPには次のようにあります。被扶養者の範囲と収入基準で判断します。
1 被扶養者の範囲
- 被保険者の直系尊属、配偶者(事実上婚姻関係と同様の人を含む)、子、孫、兄弟姉妹で、主として被保険者に生計を維持されている人
※これらの方は、必ずしも同居している必要はありません。 - 被保険者と同一の世帯で主として被保険者の収入により生計を維持されている次の人
※「同一の世帯」とは、同居して家計を共にしている状態をいいます。
① 被保険者の三親等以内の親族(1.に該当する人を除く)
② 被保険者の配偶者で、戸籍上婚姻の届出はしていないが事実上婚姻関係と同様の人の父母および子
③ ②の配偶者が亡くなった後における父母および子
※ただし、後期高齢者医療制度の被保険者等である人は、除きます
2 収入の基準
被扶養者として認定されるには、主として被保険者の収入により生計を維持されていることが必要です。認定については、以下の基準により判断をします。
ただし、以下の基準により被扶養者の認定を行うことが実態と著しくかけ離れており、かつ、社会通念上妥当性を欠くこととなると認められる場合には、その具体的事情に照らし保険者が最も妥当と認められる認定を行うこととなります。
【認定対象者が被保険者と同一世帯に属している場合】
認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者の年間収入の2分の1未満である場合は被扶養者となります。
なお、上記に該当しない場合であっても、認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者の年間収入を上回らない場合には、その世帯の生計の状況を果たしていると認められるときは、被扶養者となる場合があります。
【認定対象者が被保険者と同一世帯に属していない場合】
認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者からの援助による収入額より少ない場合には、被扶養者となります。
つまり、被扶養者が60歳以上か障害のある人以外なら、年収は130万円未満である必要があるということです。
◆特例的な被扶養者の認定基準の整理
被扶養者認定においては、過去の課税証明書、給与明細書、雇用契約書等を確認しているところ、短時間労働者である被扶養者(第3号被保険者等)について、一時的に年収が130万円以上となる場合には、これらに加えて、人手不足による労働時間延長等に伴う一時的な収入変動である旨の事業主の証明を添付することで、迅速な被扶養者認定を可能とする。
※あくまでも「一時的な事情」として認定を行うことから、同一の者について原則として連続2回までを上限とする。
上の画像の例であれば、Aさんは、本来月10万円のパートで年収120万円の予定です。
それが、人手不足のため、10月から12月まで月12万円の収入になりそうとします。
月収12万円の場合、年収は本来144万円なので、ここで扶養を外す手続きを行う場合があります。
しかし、パート先の事業主が、これが一時的であることの証明を夫側の会社に提出することにより、引き続き、扶養の範囲内であることを継続できることになるという仕組みです。
上の例で分かりにくいのは、10月から12月まで12万の収入であったとしても、126万円の年収になってしまうことです。一般的に年収130万円と覚えられていますからこの場合でも、扶養の認定基準に影響しないように感じますが、じつは、社保の認定基準は月で判定します。月の収入が10万8千円を超えた場合には、扶養から外す基準に達するということになります。
◆社会保険の加入基準とは
次に、社会保険の被保険者の加入基準を整理してみましょう。
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/20150518.html
厚生年金保険に加入している会社、工場、商店、船舶などの適用事業所に常用的に使用される70歳未満の方は、国籍や性別、年金の受給の有無にかかわらず、厚生年金保険の被保険者となります。
パートタイマー・アルバイト等でも事業所と常用的使用関係にある場合は、被保険者となります。
1週間の所定労働時間および1カ月の所定労働日数が同じ事業所で同様の業務に従事している通常の労働者の4分の3以上である方も対象です。
つまり、正社員が一日8時間働く場合は、6時間週5日の人は、たとえ、パートや学生であっても社保に加入することになります。
ただ、この 3/4のところで、会社の規模によって加入基準を引き下げる という施策が行われております。このことが余計にこの適用基準を難しくしているところでしょう。
◆具体例:大阪の学生の場合
大阪の最低賃金 1064円、親の扶養に入ろうと思えば、働くことができる時間数は次の通りです。
1,300,000 / 12 / 1064 =101時間
4週間で101時間なので、週当たりは次の通りです。
101 / 4 = 25時間
1日 5時間働く場合 週5日 を働くことができます。
この学生が、人手不足で、一日6時間働くようになった場合、130万円を超えることになりますが、事業主の証明をもらうことで、父親の扶養の継続が可能ということになります。
毎月忙しく、なかなか人材の採用がうまくいかず、毎月14万円になった時を想定します。
140,000 / 1064 = 131時間
131 / 4 = 32.75時間
となり、週当たりの労働時間が30時間を超えてしまっています。
単月たまたま超えたのではなく、常態的にこれが3か月以上続くような場合、契約関係を見直すか働き方を考えてもらうことになります。つまり、本人の社会保険の加入ということになります。
月14万円を働くような場合、そもそも、その人は、社会保険の加入基準に該当している可能性が高くなります。お父さんの扶養の範囲云々の話ではなくなってしまいます。
◆Q&Aの抜粋
Q1- 5
今回の措置(事業主の証明による被扶養者認定の円滑化)は、人手不足による労働時間延長 等に伴う一時的な収入変動である旨の事業主の証明によって、健康保険組合等の保険者による円滑な被扶養者認定を可能にするとのことですが、「一時的な収入変動」と認められる上限額はいくらまででしょうか。
A:今回の措置(事業主の証明による被扶養者認定の円滑化)は、被扶養者(認定対象者を含む。以下同じ。)の収入確認に当たって、通常提出が求められる書類と併せて、一時的な収入変動である旨の事業主の証明を提出することで、保険者による円滑な被扶養者認定を図るものです。
その上で、「一時的な収入変動」の具体的な上限額については、
- 仮に上限を設けた場合、当該上限が新たな「年収の壁」となりかねないこと
- 一時的な事情によるものかどうかは収入金額のみでは判断が困難であること
からお示しすることは困難ですが、各保険者において雇用契約書等も踏まえつつ、当該増収が一時的なものかどうか確認いただくこととなります。
なお、法令・通知等に基づき、
- 被扶養者が被保険者と同一世帯に属している場合に、被扶養者の年間収入が被保険者の年間収入を上回る場合
- 被扶養者が被保険者と同一世帯に属していない場合に、被扶養者の年間収入が被保険者からの援助による収入額を上回る場合
には、当該被保険者がその世帯の生計維持の中心的役割を果たしていると認められず、被扶養者の認定が取り消されることとなります。
具体的な金額の指定はありませんが、上の例から考えても毎月14万円を超えるような場合は、否定されることも予想できます。
が、実際のところ、かなり柔軟に運用されそうです。
Q1- 6
今回の措置(事業主の証明による被扶養者認定の円滑化)については、あくまでも「一時的な事情」として認定を行うことから、同一の者について原則として連続2回までを上限とすることとされていますが、具体的には何を以て「1回」「連続2回」と数えることとなるのでしょうか。
A:今回の措置(事業主の証明による被扶養者認定の円滑化)は、被扶養者の収入確認に当たって、通常提出が求められる書類と併せて、一時的な収入変動である旨の事業主の証明を提出することで、保険者による円滑な被扶養者認定を図るものです。
そのため、新たに被扶養者を認定する場合を含む被扶養者の収入確認に当たって事業主の証明を用いて一時的な収入変動である旨を保険者が確認した場合には、「1回」と数えられることとなります。
その上で、社会保険の被扶養者の収入確認については、被扶養者として認定した者については、認定後、少なくとも年1回は保険者において被扶養者に係る確認を行い、被扶養者の要件を引き続き満たしていることを確認することが望ましいとしています。
したがって、被扶養者の収入確認を年1回実施する場合は、「連続2回」とは連続する2年間の各年における収入確認において事業主の証明を用いることが「連続2回」になります。
130万円を超える人を、事業主の証明をもって収入確認をした時を1回目とし、その場合は、翌年も収入チェックを必須とし、それを2回目とカウント。その翌年は、一時的な収蔵化とは言えない ということになります。
Q1- 8
今回の措置(事業主の証明による被扶養者認定の円滑化)は、人手不足による労働時間延長等に伴う一時的な収入変動である旨の事業主の証明によって、健康保険組合等の保険者による円滑な被扶養者認定を可能にするとのことですが、どのような事情であれば「一時的な収入変動」として認められるのでしょうか。
A:一時的な収入増加の要因としては、主に時間外勤務(残業)手当や臨時的に支払われる繁忙手当等が想定され、一時的な収入変動に該当する主なケースとしては、
- 当該事業所の他の従業員が退職したことにより、当該労働者の業務量が増加したケース
- 当該事業所の他の従業員が休職したことにより、当該労働者の業務量が増加したケース
- 当該事業所における業務の受注が好調だったことにより、当該事業所全体の業務量が増加したケース
- 突発的な大口案件により、当該事業所全体の業務量が増加したケース
などが想定されます。一方で、基本給が上がった場合や、恒常的な手当が新設された場合など、今後も
引き続き収入が増えることが確実な場合においては、一時的な収入増加とは 認められません。
人手不足で、労働時間が契約時と比べて少し増えた結果収入が増えた 場合が該当するということですね。
Q2-2
被扶養者が学生の場合、今回の措置(事業主の証明による被扶養者認定の円滑化)における取扱いはどうなるのでしょうか。
A:学生であっても同様の取扱いとなります。
Q2- 4
シフト制の場合、今回の措置(事業主の証明による被扶養者認定の円滑化)における取扱いはどうなるのでしょうか。
A:シフト制(※)であっても同様の取扱いとなります。
一時的に勤務が増加することにより収入超過となる場合は、事業主の証明による被扶養者の認定の円滑化の対象となります。ただし、契約変更により時給等が上昇し、通常どおり勤務した場合においても収入超過が見込まれる場合は、対象となりません。
※ 「シフト制」とは、労働契約の締結時点では労働日や労働時間を確定的に定めず、一定期間(1週間、1か月など)ごとに作成される勤務シフトなどで、初めて具体的な労働日や労働時間が確定するような勤務形態を指します。
残業だけにかかわらず、シフトが1日増えるような場合もこれに該当するということですね。
Q2- 5
被扶養者の収入要件の確認について、被扶養者が 60 歳以上の者である場合又は概ね厚生年金保険法による障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障害者である場合にあっては年間収入の要件が 180 万円未満とされていますが、今回の措置(事業主の証明による被扶養者認定の円滑化)は、その判定の際にも適用されるのでしょうか。
A:今回の措置(事業主の証明による被扶養者認定の円滑化)は、被扶養者が60 歳以上の者である場合又は概ね厚生年金保険法による障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障害者である場合の、年間収入が 180 万円未満であるか否かの判定についても適用されます。
Q3- 1
事業主の証明はいつ、どこに提出するのですか。
A:被扶養者の方について、新たに被扶養者の認定を受ける際、又は健康保険組合等の保険者が被扶養者の資格確認を行う際に、年間収入が確認されることになります。
この際に、被扶養者を雇う事業主から一時的な収入変動である旨の事業主の証明を取得し、被保険者の方が勤務している会社を通じて各保険者に対して、通常提出が求められる書類と併せて、事業主の証明を提出することになります。
このため、各保険者の被扶養者の収入確認のタイミングに合わせて、被扶養者の勤務先の事業者から一時的な収入変動である旨の証明を取得してください。
保険者(健保協会や組合健保)から求められた時には、保険者に提出します。それまでは、会社で収入確認をしておくことになりますから、会社で書類を保管することになります。
Q3- 6
事業主の証明を提出しさえすれば、引き続き被扶養者 に 該当する ということでしょうか。
A:雇用契約書等を踏まえ、年間収入の見込みが恒常的に130万円以上となることが明らかであるような場合には、被扶養者に該当しなくなることとなります。
また、社会保険の被扶養者の要件は、収入要件だけではないため、その他の要件を満たしていないことにより、被扶養者に該当しなくなることも考えられます。
あくまで、一時的な収入の増加ということですから、そもそもの契約段階で130万円を超えているような場合は、この制度には該当しないということです。