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2023.10.03
【判例】 在職中に同僚に自分の新会社への転職を行うような引き抜き行為について損害賠償請求ができるのか?

宮崎地方裁判所都城支部令和3年4月16日判決

事案の概要

 Aは人材派遣会社Xに在職中に別に人材派遣会社Yを設立した。そしてXの従業員に対して引き抜き行為を行い、この引き抜き行為が不法行為ないし債務不履行であるとして損害賠償請求がされた。
 

判旨

 「社会的相当性を逸脱した引き抜き行為であるか否かは、引き抜かれた従業員の当該会社における地位や引き抜かれた人数、従業員の引き抜きが会社に及ぼした影響、転職の勧誘に用いた方法、態様等の初版の事情を総合して判断することとなる。」
 

解説

 近時、引き抜き行為が違法であると争われるケースで、違法であるとして損害賠償請求が認められるケースが見られるようになってきています。

 基本的な判断の枠組みとしては「雇用契約が締結されると、会社の従業員は、使用者に対し、雇用契約に付随する信義則上の義務として、原告が主張するとおりの誠実義務を負い、従業員が誠実義務に違反した場合は、それによって生じた損害を賠償すべき責任を負う。そして、従業員が行った引き抜きが単なる転職の勧誘を超え、社会的相当性を逸脱してきわめて背信的な方法で行われた場合には、誠実義務違反となり、債務不履行または不法行為責任を負う。」と本判決もしており、実際にはどのような事実が存在するか、それが認定されるかによって結論が異なると思われます。

 本件では人材派遣会社という特殊性があるが、派遣先会社は変えずに派遣元が変わるものです。これによって売り上げが減少することになります。また、派遣スタッフを派遣する先は、必要とするスタッフの人数は当然に上限があり、派遣スタッフを新たに採用して派遣することが困難です。

 そして、本件では退職後にY社は営業を開始したものではなく、AがXに在職中に営業を開始しており、売り上げを上げており、悪質性を裏付けるものと認定されています。

 さらには、派遣スタッフを勧誘する際には、Xとはすでに話がついているかのように話をしておきながら、Xには内密にするようにとしていました。この際に、XからYに派遣スタッフの移籍が了承されたものと説明していました。この行動は、派遣先としても従前の取引先のXとの関係があるので、Xが了承しているかは重要な事項といえるでしょう。このような事実から、本件では社会的相当性を逸脱した勧誘引き抜きと認定されました

 また、同時期にXの従業員が大量に退職しており、これによってXの業務が滞る結果ともなっており、これもXが問題としたが、① 派遣スタッフは登録スタッフについては従業員とはいいがたいこと、② 派遣スタッフは条件がいい会社に移籍することが禁止されておらず、むしろ待遇がよい企業に移籍するのは当然といえるため、派遣スタッフがどこに登録するかを選択することは問題がないとしています。
 

概要

Y社はX社に在籍していたAが設立したX社と同業の会社であるが、Aが退職前からYの営業を開始しており、また、取引先を奪う行為を行ったことなどから悪質であって、Yの行った引き抜き行為は不法行為に該当するとして裁判所はYに損害賠償を命じた。
 


記載の内容は、執筆当時の法律に基づきます。また、わかりやすく記載するため、例外についてあえて記載していないことがあります。また、一定の状況下・一定の条件のことを指していることがあり、すべての状況で同様のことが言えるわけではありませんので、ご了承ください。


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