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2023.10.05
【Q&A】 書類棚に置いている就業規則ですが、その内容を知らない従業員もいると思いますが、それでも就業規則の効力はありますか?

A 就業規則の周知とは、全員がその存在を知り、見ようと思えば見れる状態を言います。

詳しく解説いたします

就業規則の周知性

就業規則の効力はいつ発生するのでしょうか?作成した時?

いいえ、それは、就業規則を周知させたときです。

労基法には次の通り記載されています。

「使用者は、この法律及びこれに基づく(略)を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によつて、労働者に周知させなければならない。」

就業規則は作成したあと、それを従業員に周知させたときに効力が生まれます。では、周知とはどういうことでしょうか?
 

周知とは、就業規則の内容を従業員が理解した時ではない

よく勘違いされていることですが、周知とは、「実質的に見て当該事業場の労働者集団に対して当該就業規則の内容を知りうる状態においていたこと」と解されています。だから、次のことを従業員が知っていればいいのです。就業規則の内容や意味を知っているか知らないかは関係がありません。(もちろん内容や意味を知っていないと守れませんから実際の運用では知ってもらわないと意味がないのですが)
 

1 会社に就業規則があるということ
2 就業規則の場所を従業員が知っていること

重要判例:秋北バス事件 (S43.12.25最大判)

【事案の概要】

  1. 主任以上の職にある者に新たに55歳停年制(一般従業員は50歳)を設ける就業規則の変更によって解雇された従業員Xが、本人の同意のない就業規則の変更には拘束されないから、その解雇は無効であるとして雇用関係の存在確認を求めたもの。
  2. 最高裁は、当該規則条項が合理的なものであるかぎり、個々の労働者が同意しないことを理由として、その適用を拒否することは許されないとして、申立てを棄却した。
     

【判示の骨子】

(1) 就業規則は、当該事業場内での社会的規範にとどまらず、法的規範としての性質を認められているから、就業規則の存在や内容を現実に知っているか否かにかかわらず、また、個別的に同意したかどうかを問わず、当然に、その適用を受ける

(2) 就業規則の作成・変更によって、既得の権利を奪い、不利益な労働条件を一方的に課すことは、原則として許されないが、労働条件の統一的・画一的な決定を建前とする就業規則の性質からして、当該規則条項が合理的なものであるかぎり、個々の労働者が同意していないことを理由として、その適用を拒否することは許されない(これに対する不服は、団体交渉等の正当な手続による改善にまつほかはない)。

(3) 停年制は、一般的に不合理な制度ではなく、新たに設けられた55歳という停年は、わが国産業界の実情や会社の一般職種の労働者の停年が50歳であることと比べても低いとはいえない。

(4) 本件条項は、「停年退職」制を定めたものではなく、停年に達したことを理由として解雇するいわゆる「停年解雇」制を定めたものであるが、再雇用の特則によって、苛酷な結果を緩和する途が開かれており、Xにも停年解雇後引き続き嘱託として採用する旨の意思が表示されている。

(5) Xも含む中堅幹部で組織する「輪心会」の会員の多くは、同条項は、後進に道を譲るためのやむを得ないものとして、これを認めている。

(6) 以上のことからすれば、当該条項は決して不合理なものではなく、また、信義則違反・権利濫用があったとは認められず、Xは、当該条項の適用を拒否できない

厚生労働省総合情報サイトより
 

実務的に絶対実施しておきたいこと=どうすれば就業規則の周知をすることができるか?

とても簡単です。最初の雇い入れの時に次のことを伝えるだけです。
 

  1.  就業規則がある と言う
  2.  就業規則の場所 を伝える

ただ、これだけです。
逆に言えば、これをしていない就業規則は、その効力を失うことにもなりえますから注意が必要です。


記載の内容は、執筆当時の法律に基づきます。また、わかりやすく記載するため、例外についてあえて記載していないことがあります。また、一定の状況下・一定の条件のことを指していることがあり、すべての状況で同様のことが言えるわけではありませんので、ご了承ください。

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