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2024.01.08
部下を「バカ」っていったくらいでは、何でもかんでもパワハラにはならないという事例

先日友人と食事をしていましたが、何をやっても「○○ハラスメント」と思ってします風潮にへきえきとします。確かに昭和チックな指導方法は時代錯誤ですし、私が若かったころのような指導方法に問題があることは認めます。しかし、本当の意味で指導、コミュニケーションと思っているのに、何でもかんでもハラスメントと決めつけてくるのはちょっと違うかなと思います。
 

昭和はOKでも令和はアウトなハラスメント事例

・今日は元気そうだね。彼氏とデート?

・ヌードポスター(カレンダー)を会社に掲示する

・「存在が目障りだ、いるだけで迷惑だ」「お願いだから消えてくれ」など厳しい言葉で罵倒

・従業員Aがミスをした時に頭を叩く程度の暴行を行う

基本的に、業務に関係がない会話はコミュニケーションというよりハラスメントと考えてから発言したほうがいい時代ではあります。「まだ結婚しないの?」「彼氏とデート?」という発言は、業務に一切関係がありません。ただ、この発言を一度したからハラスメントで訴えられるかというとそうではありません。しかし、こういう発言をする人は、それがハラスメントに当たることを意識しておらず、何度も繰り返して発言する可能性が高く、繰り返し行われる行為としてハラスメント認定される可能性は非常に高いと言えます。

厳しく朝礼中に罵倒するような行為は昭和の時代はよくありましたし、程度の差はあれ、愛の鞭とよぶ暴力行為もありました。当然これらの行為はパワハラに該当します。こういうパワハラ行為をする人を注意するとすぐに「私が新入社員のころは・・・」と昔の話を口に出します。時代錯誤も甚だしい行為で、会社はしっかり指導する必要があるでしょう。
 

令和でもハラスメントにならない事例

医療法人社団S事件(千葉地裁令和5年2月22日判決)

「4 原告は、平成30年6月5日、Bとともに左母指全層植皮術の手術を行ったところ、Bは、原告の執刀中、『バカ、お前』、『何やってんだよ』、『おい!』、『貸せよ」』ど、局所麻酔中の患者や看護師の前で繰り返し罵倒し、指導もされなかった。また、原告は、上級医に対し、当該患者がモンスターペイシエントであることから、フォローを願いたい旨述べたが、これを受けられず、Cからは『外来は一人数分で終わらせるもの』、『遅すぎる』などと叱責され、原告一人で対応することを余儀なくされた。」

「5 原告は、平成30年6月6日、Bとともに後頚部巨大粉瘤切除術の手術を行ったが、Bは、原告に対し、指導を一切せず、手術中『バカ、お前』などと看護師の面前で原告を罵倒し続けた。

「7 原告は、平成30年6月22日、Dとともに、特に難易度が高い左母指手術の手術をしたが、Dは、原告に対し、『バカ』、『何やってんだよ』などと怒号を上げて叱責を繰り返し、『何で出来ねえんだよ』、『じゃ先生やってよ』などと無理な要求を繰り返した。」
 

裁判所の判断

上記発言は、その内容や発言がされた状況からみて、原告の執刀により患者の身体を損傷させる可能性があったためこれを止める趣旨であるか、又は原告が手術を進めることができないことを受けたものと認められ、手術中という緊張感のある状況での発言であることに鑑みると、社会通念上許容される指導の範囲を逸脱した違法な発言であるとは認められない。

原告は、患者がモンスターペイシエントであり、上級医にフォローを求めたが受けられず、かえってCから『外来は一人数分で終わらせるもの』などと叱責された旨主張するが、原告が医師として外来を担当する限り、そのような患者に1人で対応することはやむを得ないものであり、上級医の助力を得られなかったからといって、それだけで嫌がらせをされたなどということはできず、Cの『外来は一人数分で終わらせるもの』との発言も、患者数等の実情を踏まえた外来診察のあり方を述べるものにとどまり原告を指導する範疇を逸脱しているとはいえない

しかしながら、上記各行為も、原告が後期研修医として一定程度の手技を行うことを当然期待されている立場にあったことを考慮すれば、上記・・・と同様の理由で違法とはいえず、特に別紙7の7の行為については、Eの発言自体からも、原告を貶め、必要以上に精神的緊張を与えるものとは認められない。


以上のことから、状況から言って、バカといっただけではハラスメントにならないこともあるということが言えます。関西では、「あほ」という言葉を日常よく使います。本当に、その人の人格を否定する目的で使う「あほ」とは全く異なります。ハラスメントになるからその言葉全てを使ってはいけないとまでは言えないと私は認識をしております。

しかしながら、あほ、バカといわずに指導できるならそれはそれが望ましいことは間違いないです。ただ、最近は、ハラスメントで上から注意を受けるくらいなら指導をしない上司が増えているのはとんでもないことです。遅刻や早退をしたら、思いっきり指導してあげるのがいいでしょう。人格を否定するのではなく、その人の成長のため、お客様へのサービス向上のため指導が必要です。

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