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2024.01.05
【判例】 有期雇用を相当程度繰り返してきた契約社員を、後から定めた更新上限を理由に雇止めとすることはできるのか?

事案の概要

H広告代理店事件 福岡地方裁判所令和2年3月17日判決

 原告は昭和63年4月に1年契約の有期雇用で被告会社に入社し、その後毎年契約を更新してきたが、平成30年度の契約更新を拒絶され雇止めとされた。
 被告は平成20年4月1日に就業規則を変更し、有期雇用契約の上限を5年としそれを超えて更新しないものとした。ただし、この規定はすでに、その時点で5年を超えて雇用されている従業員には適用しないとした。また、平成25年4月1日以降においては無期転換申込権が認められることとなったため、上限を5年とする扱いをした。
 原告は平成28年12月に次年度の更新を申し入れたが、5年ルールで更新をしないとされた。
 

判旨

 本件では、毎年契約書に署名押印する方式で契約を更新していたが、契約書に5年を超えての更新はしないと明記されていたが、その点について裁判所は

「不更新条項が記載された雇用契約書への署名押印を拒否することは、原告にとって、本件雇用契約が更新できないことを意味するのであるから、このような条項のある雇用契約書に署名押印をしていたからといって、直ちに、原告が雇用契約を終了させる旨の明確な意思を表明したものとみることは相当ではない」とし、原告が雇用契約上の地位にあることを確認した。
 

解説

 本件では、雇用契約書に不更新条項が入っていた点で合意があると会社が主張していたが、裁判所が雇用契約書と一体となっている以上、サインしないことは考えられないとして雇止めを不当としたものです。

 もともと昭和63年4月入社であり、その後29年にわたり勤務してきており、最後には契約期間が3年となりましたが、25回の更新を繰り返しています。そのため、裁判所の考え方としては、更新は契約の形態に合わせた形式的なものに過ぎないと判断しています。
 その間に特に問題もなく、また事後的に取り入れられた評価シートでも水準程度の仕事をしているとされていた原告に対して、無期転換ルールの適用を避けるために行われた雇止めとも言えるでしょう。
 また、これだけ更新が続いていると、更新に対する原告の期待は大きく、更新されて当然であると考えていても不思議ではありません。事後的に規定が変更されていますが、まず、最初は原告は対象外であったこと、その後に無期転換ルールのために変更された規定での雇止めであること、などを考えると、労働契約法19条2号が該当するものと考えられ、実際に裁判所も当該条項により保護されるとしました。
 なお、雇止めに合理的な理由があるかについては、抽象的な経費削減などの考え方では不十分であり、現実的な理由の主張が裁判では必要とされるでしょう
 

概要

 昭和63年に入社し、その後25回契約を更新してきた従業員においては、更新の期待が現実的なものであり、契約書に更新しない場合として5年を超えてはならないと記載してあったとしても、合理的に考えた場合従業員はそれに合意したとは言えないとして、雇止めを無効とした。
 


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