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2024.01.16
理・美容の特殊な働き方と労務管理

理・美容の業界では、一般的な働き方と異なることが多いですが、その場合でもほかの業種と同じように労働基準法が適用されます。
特殊な働き方とその管理方法について、ケースに合わせて整理をしていきたいと思います。
 

業務委託社員について

業務委託とは、「一定の業務の遂行を他人に委託する契約」をいいます。大きく、請負と委任契約に分けられます。請負とは、業務に対する成果物を完成させることで報酬を受けることを言い、委任とは、業務を行うことで報酬を受けるが、成果物を完成させる責任を負わないことを言います。

業務委託契約とするメリットには、次のようなものがあげられます。

  • 従業員ではないので、残業が発生しない
  • 従業員ではないので、最低賃金の制約がない
  • 従業員ではないので、労働時間の制約がない
  • 業務がない時に、空白の労働時間がなく、費用が安くなりやすい
  • 不要になった時に、委託契約を終了することができ、解雇などの問題が生じない

次に、そのデメリットもございます。

  • 労働法が適用されないため従業員のリスクがある
  • 従業員と判断されると過去にさかのぼって残業の支払いなどが発生する
  • 条件が厳しくなり、人が集まりにくい
  • 人の入れ替わりが激しくなりやすく、企業風土が乱れやすい

業務委託と通常の社員の働き方がよく似ているケースがよくあります。業務委託のメリットだけを知り、社員と全く同じ働き方だけど、名称のみを業務委託としているような場合、業務委託として認められないと判断されたときには、多くのペナルティが会社に発生することがあります。そうならないために、業務委託として認められるためのポイントを押さえる必要があります。それに該当していないときは、該当するように働き方を変更するか、業務委託から自社雇用の社員に変更するなどする必要があります。

1 指揮命令の存在

具体的な業務の進め方などの指示を受けることなく、業務を遂行できる状態である必要があります。業務委託とは、成果の納品を依頼するものですから、具体的な業務の進め方などを指示している場合は、業務委託とは言えません。指揮命令関係が事実上ある場合は、労働者性を認める積極的要素となります。

2 時間の拘束性

具体的な時間の指定を受けることなく、業務を遂行できる必要があります。例えば、朝は9時出社、18時までは会社内にいること、など、時間の指定を行っているような場合は、業務委託とは言えません。時間的校則がある場合は、労働者性を認める積極的要素となります。

3 業務代替性

本人以外の人がその業務を遂行したとしても、依頼された業務の成果物を完了させたとしてもそれを許諾される状況にある必要があります。代替性がない場合は、労働者性を認める積極的要素となります。

4 諾否の自由

依頼された業務を受けるか受けないかを自由に判断できる状態にある必要があります。諾否の自由がない、実質ない場合は、労働者性を認める積極的要素となります。

5 請求書の有無

業務委託なのですから、委託先から請求書を受けて、その費用の支払いをしているという事実が必要です。請求書がなく、定額または、成果に応じた報酬を払っているような場合は、労働者性を認める積極的要素となります。

6 専属性の有無

専属性とは、会社から他社の業務への従事が事実上制約されているかという要素をいいます。勤務時間や場所の拘束がないとしても、他社の業務の受諾や従事が事実上制約されている場合、会社への専属性が強いとして、労働者性を認める積極的要素となります。

7 費用負担の有無

場所を借りている場合は地代、電気を借りている場合は電気代など、費用の負担がない場合、業務委託とされず、労働者性を保管する要素となります。

以上を総合判断し、労働者か否かを判断されます。特に1から4については、判断基準として強い要素となります。

完全歩合給の社員について

完全歩合給の社員の設定も可能と言えます。ただし、その場合であっても、最低賃金の縛りはありますので、保障給の計算をする必要があります。

「完全歩合給制で、今月は成果がゼロだったので、給料もゼロ」という扱いをすることはできず、給料が最低賃金以下の場合、会社は、最低賃金との差額を、労働者に対して支払う必要があり、それを保障給といいます。また、この保障給は、最低賃金だけの計算では足らず、平均賃金の6割のいずれか高い方と比較し、補償するという制度です。

完全歩合給は、安定した雇用環境という意味では、理・美容にはあまりお勧めできないかなというのが、私の認識です。

歩合給について

歩合の計算方法は会社独自定めることは可能です。「月額売上30万円を超えたらいくら、50万円を超えたらいくらとする。」という複雑な取り決めとしたとしても特に問題はありません。しかし、複雑にすればするほど計算が複雑になり、給与計算誤りのもとになるので、注意が必要です。計算誤りを防ごうと思えば、半期ごとに計算し、賞与として支給するというのも一つの方法です。しかしながら、従業員によっては、半期に一度の賞与より、月々の給与でもらうほうが嬉しいという人もあり、どちらがいいかは会社の判断となります。

また、歩合給がある場合に気を付けなければならないのは、残業代の計算と、有給休暇の計算です。

歩合給の残業代の計算はこちらです。

歩合給の有給休暇の計算はこちらです。

予約がない時間帯を出勤しないとするような場合

取り扱いに注意が必要ですが、その時間帯が休憩なら、休憩時間としてカウントすることは可能です。しかし、毎日労働時間が異なったりすると労働者の働き方は個別に異なり、結果として、労働環境の悪化、最終的には退職につながることもありますので、総合的に判断して、働きやすいルールを作成する必要があります。

店舗間の移動がある場合の移動時間の取り扱い

一度出勤し、店舗間の移動がある場合、その移動の時間は労働時間として計算されます。休憩時間中に移動することもあるかもしれませんが、休憩時間とは、労働から解放されて、自由にそれを利用することができる状態を指します。移動中にご飯も食べることができませんから、そういった取り扱いはされないほうがいいでしょう

経費の負担がある場合

経費の負担がある場合、後日それを給与と一緒に支給する場合であっても、これは給与ではありません。給与計算の際には気を付ける必要があります。

最初はアルバイトで社員と変える制度を導入している場合

特に問題はありませんが、この場合ですと、キャリアアップ助成金に該当しないケースもありますから制度の設計には気を付けなければなりません。

令和5年11月からキャリアアップ助成金の拡充が行われております。詳しい要件はこちらをご覧ください。

閉店後に研修を行っている場合

この研修が強制なのであれば、労働時間としてカウントされますので、残業代の支給が必要となります。スキルアップのため自由に店舗を使って練習をしてもよいという制度の場合であったとしても、残業とされることがあります。これは、暗黙の指示とされるためです。

業務が終わったらできるだけ速やかに会社から帰ってもらうことが理想ですが、スキルアップの自主練習を認める場合は、費用負担をしてもらいましょう。

予約がない時間は決まった時刻より早く帰ってもいいとする制度とする場合

みなし労働時間といいます。この場合、早く帰っても終業時刻まで勤務したことともみなすということなので、これ自体は特に問題はありません。ただ、昨日は2時間早く帰ったから、その分今日2時間多く働いてチャラにするようなことはできません。

週休2日ではない休日制度とする場合

週によって勤務する日数が異なる場合、週40時間労働を守れなくなります。こういった場合は、変形労働時間制の導入を検討する必要があります。例えば、第1週が4日、第2週が6日勤務するような場合、平均すると週5日となります。しかし、変形制を導入していない場合は、2週間で8時間の残業となり、別に残業代を支払う必要がでます。

ただし、変形制の導入は難しいので、導入の際は、覚悟が必要です。

1か月単位の変形例労時間制のパンフレットはこちらです

資格を取った場合に報奨金を支給している場合

特に問題はありません。ただし、この報奨金は賞与とされます。保険料などが発生しますので注意する必要があります。金額の大小、給与と一緒に支給しているなどは関係がありません。

シフトによる出勤で、決まったお休みがない場合

このこと自体が問題とはなりませんが、週のお休みが何日あるかによって、変形労働時間制の導入が必要となるかどうかの判断が必要となります。

また、シフト管理は結構大変なので、ジョブカンなどの勤怠管理ソフトを導入することをお勧めします。

ジョブカン勤怠に関する記事一覧はこちらです

残業がある人早く帰る日があり、それを相殺する制度を導入している場合

フレックスタイム制を導入するのが、一番近い働き方になるのではないかと思います。この場合、就業規則に整える必要もありますので、規定例を参照するなどして制度を設計する必要があります。

フレックスタイム制導入の手引きはこちらです


記載の内容は、執筆当時の法律に基づきます。また、わかりやすく記載するため、例外についてあえて記載していないことがあります。また、一定の状況下・一定の条件のことを指していることがあり、すべての状況で同様のことが言えるわけではありませんので、ご了承ください。

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