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2024.02.09
【Q&A】 有給休暇の5日間付与義務は有給休暇の計画的付与ですべて解決できますか?
目次
有給休暇の5日間付与義務を簡潔に言うと
2019年4月の労働基準法の改正により、年に10日以上の有給休暇を付与された従業員には、1年間に5日以上の有給休暇を取得させることが義務化されました。長時間労働を抑制し、労働環境を改善するための施策とされています。
有給休暇の取得義務化の対象者は、正社員だけではなく、パートやアルバイトなどフルタイム以外で働く従業員も含まれます。
参考:有給のリーフレット
上の表でいう赤枠の人たちが有給休暇の5日付与義務に該当します。
1 会社が有休を取得する時期を指定します
使用者は、時季指定に当たっては、労働者の意見を聴取しなければなりません。また、できる限り労働者の希望に沿った取得時季になるよう、聴取した意見を尊重するよう努めなければなりません。
1.使用者が労働者に取得時季の意見を聴取
2.労働者の意見を尊重し、使用者が取得時季を指定
ということで、できる限り従業員の自由意思で有休をとるというのは大前提で、それでも、自主的に有給を取らないときは、従業員の意見を尊重しながら会社が取得日を決定させてでも有給休暇を取らせる必要があります。
2 年次有給休暇管理簿
年次有給休暇管理簿を作成し、3年間保存しなければなりません。これがなかなか面倒です。
時季、日数及び基準日を労働者ごとに明らかにした書類(年次有給休暇管理簿)を作成し、当該年休を与えた期間中及び当該期間の満了後3年間保存しなければなりません。(年次有給休暇管理簿は労働者名簿または賃金台帳とあわせて調製することができます。また、必要なときにいつでも出力できる仕組みとした上で、システム上で管理することも差し支えありません。)
3 就業規則への規定
(規定例) 第○条1項~4項(略) 5 第1項又は第2項の年次有給休暇が10日以上与えられた労働者に対しては、第3項の規定にかかわらず、付与日から1年以内に、当該労働者の有する年次有給休暇日数のうち5日について、会社が労働者の意見を聴取し、その意見を尊重した上で、あらかじめ時季を指定して取得させる。ただし、労働者が第3項又は第4項の規定による年次有給休暇を取得した場合においては、当該取得した日数分を5日から控除するものとする。 |
休暇に関する事項は就業規則の絶対的必要記載事項(労働基準法第89条)であるため、使用者による年次有給休暇の時季指定を実施する場合は、時季指定の対象となる労働者の範囲及び時季指定の方法等について、就業規則に記載しなければなりません。
4 罰則があります
5日を取得できない人一人当たりの罰金なので、結構大きな金額になります。
有給休暇の計画的付与を簡潔に言うと
年次有給休暇のうち、5日を超える分については、労使協定を結べば、計画的に休暇取得日を割り振ることができる制度のことをいいます。
参考:労使協定例
注意1 付与日数のうち5日を除いた残りの日数が計画的付与の対象
年次有給休暇の日数のうち5日は個人が自由に取得できる日数として必ず残しておかなければなりません。このため、労使協定による計画的付与の対象となるのは年次有給休暇の日数のうち、5日を超えた部分となります。
例えば、年次有給休暇の付与日数が10日の従業員に対しては5日、20日の従業員に対しては15日までを計画的付与の対象とすることができます。
なお、前年度取得されずに次年度に繰り越された日数がある場合には、繰り越された年次有給休暇を含めて5日を超える部分を計画的付与の対象とすることができます。
注意2 労使協定の締結が毎年必要
年次有給休暇の計画的付与を導入するには、毎年労使協定を結ぶ必要があります。監督署への届け出は不要ですが、毎年労使協定を結ぶ必要がありますので、忘れないようにする必要があります。
計画的付与では解決できないケースがある
1 従業員からの不平が出る
付与された有給休暇を会社の都合で使われるのは気分がいいものではありません。例え、毎年使いきれず時効消滅していたとしても。
その不満を乗り越えてでも、導入したいかどうかを検討する必要があります。
特に、夏季休暇を廃止し、そこに有給休暇を当てるような制度の場合、従業員にとっては不利益な変更となりますので、しっかり話し合いをする必要があるでしょう
2 年間の労働日数が増えるため時間単価が下がる
年間休日数を変えずに計画的付与を行うような場合は、これには該当しませんが、夏季休暇を廃止し、そこに有給休暇を当てるような場合は、年間休日数が減ることになります。
基礎単価が変わりますので、最低賃金のチェックが必要です。
3 有給休暇を持っていない従業員への対応が必要
有給休暇の計画的付与を 5/1に行うとして、4/1に入社した社員はまだ有給休暇を持っていません。有休をうまく使いきった社員も同様です。
さて、この場合はどのように対処すればいいでしょうか?
対応方法1 特別休暇を与える
特別休暇とは、年次有給休暇とは異なり事業主の裁量に基づいて付与される休暇のことを言います。有給休暇の付与とは異なります。
計画的付与をする日に有給休暇がない場合、例えば、入社して半年を経過していない場合やすでに付与された有給の大部分を使っていて残日数がない場合ですが、有給休暇の使用の代替手段として特別休暇を付与します。
特別休暇を付与すると、有給休暇を取得した時と同じように給与が減らず、お休みを取得することができます。
ただ、明らかに他の従業員との不平等が生じるため、注意が必要です。一定のルールを作ることは必要になるでしょう。
対応方法2 休業手当を支払う
年次有給休暇がなく、事業主の都合で事業所を休みにする場合は、休業の扱いになります。
就業規則等にもとづいて、賃金や手当の支払いについて定め、休業手当の支払い(平均賃金の100分の60以上)の支払いが必要をすることになるでしょう
対応方法3 有給休暇を前倒しで与える
本来は、入社から6か月が経過した時に10日の有給休暇を付与しますが、それを計画的付与を行う日に前倒しで付与することができます。10日すべてを付与する必要はありません。
しかし、この場合、有休を付与する日(基準日という)が変わりますので、翌年度以降付与される日がずれていくため管理が非常に難しくなります。
あまりお勧めできない方法です。
そもそもの有給休暇の制度目的から逸脱しないように注意
有給休暇の目的は、従業員の心身の疲労を回復させることです。
有給休暇の取得率が上がらないことから政府は計画的付与や5日間の取得義務、半日有休や時間単位有給など様々な施策を打ち出していますが、これらはすべて制度目的と一致しません。
法律を守ることばかりに注目せず、有給の制度目的を忘れずに運用していってほしいところです。