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2024.04.23
【判例】 正社員と期間の定めのある臨時職員との賞与の有無の差は不合理と言えるのか? 

大阪地方裁判所令和5年6月8日判決

事案の概要

原告は被告ホテルに期間の定めのある臨時職員として勤務していた。本件訴訟時にはすでに退職している。

ホテルは、正規職員に対しては、賞与の支給率を半期ごとに業績等を踏まえて労使の協議を経て決めてきている。臨時職員に対しては賞与の支払い規定がなく、支給される場合にはその都度定めるものとされていた。

このような正規職員と臨時職員の賞与の扱いの差異について短時法・有期雇用労働者法8条に違反するとして提訴された。
 

判旨

「基本的に、上期及び下期に正社員に対して賞与を支給しており、少なくとも平成28年度から令和元年度まで一定の支給率を維持しているうえ、新型コロナウイルス感染拡大により被告の業績が大幅に落ち込んだ令和2年度においても支給率を下げながらも一定額の賞与を支給したことが認められ、正社員の賞与が被告の業績と必ずしも連動するものではなかったことが認められる」「正社員は、業務内容の責任の程度が高く、人材の活用を目的とした人事異動が行われていたことが認められる」

「正社員に対して支給される賞与には労務の対価の後払いや一律の功労報償の趣旨のほか、正社員としての職務を遂行し得る人材を確保してその定着を図る目的があったと認めることができる」とし、臨時職員から正社員への登用制度があり、登用実績もあったことも考慮し、不合理な相違ではないと判決した。
 

解説

本件は正社員と臨時職員の取り扱いの差に合理性があるかが争われた事案。
正社員にはボーナスが支給されるが、アルバイトや臨時職員にボーナスを支給する規程を設けていない会社は相当多いのではないでしょうか?規定があることによって、会社に支給義務が発生することもありますが、ボーナスからローンを組んだりしていることもあり、年収の一部として正社員に対する支給額として会社・従業員双方が認識していることもあります。

そのため、ボーナスが賃金の後払い的な性格を持つという側面はあります。
(例えば1月から6月までの給与にボーナスが支払われますが、それは報償としてのみではなく6か月間に支払われる給与の一部が含まれると解釈するということです)。

賃金後払い的性格を強く解釈した場合は、正社員と臨時職員の間での差異が認められにくくなります。

本件では、過去に臨時職員に対してボーナス支払い実績がありますが、規定があるわけではなく利益が出たときに会社側がその都度決めていたという実態がありました。
もともと会社としては臨時職員に対するボーナス支払いが義務であるとは認識していないと言っていい状態でした。

本件では、裁判所は正社員と臨時職員の社内での担当業務の差異や責任の違いを指摘し、ボーナスには人材育成のため、また、人材を退職転職等させないために従業員に支給しているものと認定しています。
これはコロナ禍で収益が悪化しても支払いをしていたことを踏まえて、利益が上がったからとの報償とは言えないという事実認定をして、会社が苦しくても人材確保のために支給していたとしたものとしました。
臨時職員は期間が満了したら退職する職員であることから、退職転職を防ぐという目的はなく、また、正社員になる方法もあることから、期間限定の職員には人材確保の目的がないとしました。
 


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