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2024.03.09
【判例】 明確なパワハラ行為が会社であったことを放置し労災認定されたとき、それを安全配慮義務違反として会社に対しても損害賠償が認められるのか?

名古屋地方裁判所令和4年12月23日判決

事案の概要

 原告は被告会社に入社したところ、中学の同級生がすでに在籍していて、当該同級生が職務にもなれていることから指導担当となった。原告が仕事をなかなか覚えられずミスが多かったことから、間違いが起きないように注意事項を紙に書かされそれを毎朝他の職員がいる前で朗読させられるのみではなく、パウチして首からかけさせられていた。また、仕事が期限内に終わらなかったらやめるくらいの覚悟でといわれたが仕事が終わらず、退職届を書くように迫られた。さらには指導担当が原告を注意するにあたって頭をたたいたりビンタをするなどの暴行に及び、ケガをさせただけではなく、パニック障害等の障害を負わせた。これについては労災認定がされている。

判旨

 守るべきことを紙に書かせて朗読させたこと、期限に間に合わなかったことで退職を迫ったことについて、「社会通念上許容される業務上の指導を逸脱した違法なパワハラ行為」と認定した。そのうえで、事業所の係長は「注意や指導の会話をする中で、頭を叩くなどの暴行が複数回繰り返されており、隣の席に座っていたことからそれを認識しえたはずであるのに、何らの対応もとらなかったことが認められる」とし、原告の上司である所長と係長は「被告が原告に対し暴力を振るっていることを認識しえたのであるから、原告が安全に業務に当たれるように被告の暴力をやめさせる対応を講じる必要があった」のに何らの対応もしなかったとして、会社に対して安全配慮義務違反を認めた

解説

 本件は会社が従業員のパワハラに対して適切な対応をしなかったことから損害賠償責任が肯定された事例です。安全配慮義務は雇用側が常に意識しなければならないもので、近時は職場内のハラスメントへの対応が不十分であるケースでも主張されてきています。また、それを理由に損害賠償を認める判決もあります。本件では、パワハラ行為が明確に認められている事案であり、パウチした反省文などを首からかけさせられるなどの外形的にも明らかなものがあった。また、暴行も行われており、それを上司が視認することが当然あったと思われる事案です。おそらくは、仕事ができないなどの問題があって、上司も強く指導をしたいという認識があったのではないかと思われます。強く指導するときに、反省を促すことや気合で頑張らせることなどを考えてしまうのはよくあることであり、それだけで、上司を責めることは酷な気持ちもしますが、仕事ができない従業員がいるのはどの職場でもありえることで、それに対応するには配置転換などで対応するしか方法はないと割り切るのが得策であり、成績不良で評価ができないのであれば就業規則の規定を用いて、適切に退職してもらう方法を考えるしか方法はありません。従業員の仕事がうまくできていないからといっていじめや暴力が許されることはなく、本件での裁判所の判断は妥当であるといえるでしょう。
 なお、暴行を受けた後に診断書を会社に提出しようとした原告の行為を上司がたしなめて診断書の受け取りを拒否した行為は、労災申請を阻止するもので不適切とされましたが、これについては会社の責任までは認められませんでした。

概要

 中学の同級生が指導担当とされた原告に対して、指導担当社員が仕事ができないとして反省文を朗読させたり失敗に対して退職を迫るなどした上に、頭を叩くなどの暴行を加えた行為について、それを認識しつつ止めなかった上司がいることから会社の安全配慮義務違反を認め、損害賠償を命じた。


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