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2023.10.10
【判例】 有給休暇の単価計算で、通常勤務した場合に支給される手当は有給単価に含まれるのか?

東京地方裁判所令和2年2月19日判決

事案の概要

 原告は、平成28年7月被告に契約社員として雇用契約を締結し、コールセンターに勤務していた。同29年2月下旬、評価シートを示され、契約満了を検討することになったと告げられた。その後、契約の更新をせずに、最後に有給を取得し、そのまま出社せずに退職した。有給休暇の手当が不足しているとして本件を提訴した(これ以外に労働局に対して助言指導を申し出たことの報復での更新拒絶であるとして不法行為による損害賠償請求も起こしている。
 

判旨

 「シフト勤務手当は、午前12時00分から午後2時50分の間に出勤し、7時間45分以上の勤務実績がある場合に、1回あたり900円が支払われるものであることが認められる。そして、前提事実(2)ウによれば、原告の労働時間についての勤務条件は、始業時刻が午後1時50分、終業時刻が午後10時50分、休憩時間が1時間であり、1日の所定労働時間は8時間であることが認められるから、原告が出勤し、所定労働時間勤務した場合には、必ずシフト勤務手当の900円が支払われる(労働契約法13条)」

「シフト勤務手当は、所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金にあたると解するのが相当である」
 

解説

 本件では、原告はシフト勤務手当1回あたり900円の不支給、日曜祝日勤務の休日手当、時間外手当・深夜勤務手当が通常の賃金にあたるのにそれが含まれていないとして提訴したものです。

 判旨のように、出勤したら必ず支払われる労働条件となっているシフト勤務手当については通常の賃金にあたるとして、支払いを命じました。

 これに対し、原告が請求した休日の割り増しについては、実際に勤務した場合に支払われるものであり、通常支払われる賃金には当たらないとし、また、時間外手当や深夜勤務手当も実際に勤務した場合に支払われるものであり、有給を計算する場合の通常の賃金には含まれないとしました。

 なお、本件では原告の申告により被告に労働局から指導が入ったことへの報復で契約の更新がなされなかったとして不法行為による損害賠償請求も合わせて行われましたが、勤務評価が低かったことを理由に否定されています。
 

概要

 有給取得時の給与計算において、労働条件どおりに勤務した場合に支払われる手当は通常支払われる賃金にあたり、計算の基礎としなければならないとし、実際に勤務しなければ支払われない割り増し等は計算にいれなくてよいとした。


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