お問い合わせ

お知らせ お知らせ

BLOG & NEWS

2023.12.27
【判例】日本郵便(休職)事件 2018.6.20

事案の概要

原告は日本郵政に期間雇用社員として8年8か月勤務していましたが、平成27年4月1日から1日も出勤していないこと、9月30日までに職場復帰の見込みがないとして雇止めをされました。これを違法であるとして訴えが提起された事例です。主張は病気などによる休職規程が期間雇用社員にないこと、雇い止めが権利濫用にあたるということ、でした。
 

判旨

「その職務内容は、役割の違いや責任の軽重等からして、管理職はもとより、それ以外の正社員とも自ずと異なるものであり、業務内容の一部に重なる部分があるとしても、全体としてみれば同一の労働を行っていると解することはできず、職務内容の変更や人事異動の有無においても大きく異なるものと解される。

また、正社員や無期転換社員については、長期的な雇用の確保という観点からいわゆる休職制度を設ける要請が大きいのに対し、期間雇用社員については、反復継続して雇用契約が更新されることにより、契約更新の期待に合理的な理由が認められるような場合であっても、使用者において、休職制度をもって、長期的な雇用の確保を図るべき要請は必ずしも高くないものと解される」
として請求を棄却しました。
 

解説

本件では、期間雇用社員が出勤できなくなったとして復職の可能性が明確ではないことから雇止めをした事案です。
正社員については休職制度を設けることがよくありますが、期間雇用社員に休職制度を設けている会社はあまりありません。もともと1年更新である場合などは休職中に期間が満了してしまうこともあり、休職制度を設けること自体を考えていないのが一般的ではないでしょうか?

本件は、休職制度がなく治療にかかる期間があったのに雇止めとなったことを争点とした珍しい事案です。
判決理由のように正社員と期間雇用社員は扱いがもともと異なり、期間の定めのない雇用契約では休職制度などを設けて復職の可否を検討する必要があるとされますが、期間の定めのある従業員にはそのような対応まではしていなくても違法ではないと判断されました。

妥当な結論ではないでしょうか?
なお、本件はこれに加えて雇止めが権利濫用かが問題となりましたが、これについても退職を避けるための対応に限界があることを指摘して権利濫用ではないとしました。本件の期間雇用社員は職種が限定されており、その職種につくことが病気ないしけがで困難となったため、他の部署に配置換えをしても仕事の内容が変わらないことが指摘されています。
 


【判例】 経営戦略室の課長でも管理監督者とはされず、残業代の支払いは必要か?
【判例】 定年再雇用者の給与を引き下げることは、同一労働同一賃金に違反するのか?
【判例】 正社員と期間の定めのある臨時職員との賞与の有無の差は不合理と言えるのか?
【判例】 労働実態がほとんどない深夜帯の勤務について通常と異なる計算方法はできるのか 
【判例】 育休明けの復職後の配置が給料が変わりないからとって自由に配置を行ってもいいのか? 
【判例】 明確なパワハラ行為が会社であったことを放置し労災認定されたとき、それを安全配慮義務違反として会社に対しても損害賠償が認められるのか?
【判例】 有期雇用契約中に適性検査を行い、適性が認められないとして、契約更新を終了することは適用といえるか?
【判例】 労働契約法20条問題 平成29年3月23日
【判例】 ドリームエクスチェンジ事件 平成28年12月28日
【判例】 SGSジャパン事件 平成29年1月26日
【判例】 F堂事件
【判例】 有期雇用を相当程度繰り返してきた契約社員を、後から定めた更新上限を理由に雇止めとすることはできるのか?
【判例】 日本郵便(休職)事件 2018.6.20
【判例】 類似の働き方の正社員と嘱託社員の間で、労働条件の差を設けることはできるのか?同一労働同一賃金の違反にならないのか?
【判例 X学園事件 平成28年11月30日判決
【判例】 有期雇用の従業員を試用期間中のコミュニケーション不良で、試用期間満了後の解雇は有効となるか?
【判例】 高知県公立大学法人事件 2018.8.16
【判例】 スマホでできる勤怠管理システムを導入しているが、直行直帰の従業員を事業場外の見なし労働時間制を使うことは可能か?
【判例】 70時間を含む固定残業手当の制度は、有効なのか?固定残業制度の可否は?
【判例】 K運輸商事事件 2018.7.18 交通費の支給上限の可否
【判例】 定年後再雇用の方の給与について、年齢給部分をカットし給与が下がることは労働契約法20条の違反となるか?
【判例】 トラック運転手の残業代の計算方法の適法性が問われた事案。
【判例】 有給休暇の単価計算で、通常勤務した場合に支給される手当は有給単価に含まれるのか?
【判例】 定年退職後に嘱託社員となったが、給与について正社員と比べて低くするのは、労働契約法20条の違反となるのか?
【判例】 在職中に同僚に自分の新会社への転職を行うような引き抜き行為について損害賠償請求ができるのか?
【判例】 調整給として支給している固定残業代は、認められるのか?
【判例】 関西ケーズデンキ事件 2018.10.15

pagetop