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2023.11.15
【判例】 スマホでできる勤怠管理システムを導入しているが、直行直帰の従業員を事業場外の見なし労働時間制を使うことは可能か?

事案の概要

セルトリオン・ヘルスケア・ジャパン事件 東京地方裁判所令和4年3月30日判決

 原告は被告会社にMR(医療情報担当者)として勤務していた。被告会社は、勤怠管理システムを導入したが、内勤者は何も問題なく利用できたが、外勤者の管理はスマホでログインして出退勤をチェックする方式としていた。そこで、直行直帰の従業員は正確な出退勤管理ができないとして事業場外労働のみなし制の運用を行った。なお、ログインするスマホは位置情報と時間の登録のみが登録されている。

 業務態様は、訪問先に自宅から直行し、業務終了後直帰するという直行直帰であった。原告は自宅を出るときに出勤の登録をし、自宅に帰宅してから退勤を登録した。原告は退職後、事業場外みなし労働時間制が無効であるとして割増賃金の請求等を求めた。
 

判旨

 事業場外労働みなし制を適用するためには労働者が労働時間の全部または一部について事業場外で業務に従事し、かつ、労働時間を算定しがたいことを要する(労基法38条の2)が、労働時間を算定しがたいに該当するかは、労働の性質、内容やその遂行の態様、状況等、使用者と労働者との間で業務に関する指示及び報告がされているときは、その方法、内容やその実施の態様、状況等を総合して、使用者が労働者の勤務の状況を具体的に把握することが困難であると認めるに足りるかという観点から判断することが相当であると最高裁判決をひいたうえで本件は事業場外労働みなし制が適用されるとした
 

解説

 出退勤管理はすべての事業所で重要な事項であり、出退勤管理システムなど導入し合理化等を図っている事業者が増えています。しかし、外勤や営業職など、ICカードなどによる出退勤管理が困難で、事業場外労働みなし制などを採用することが合理的とされる子もあります。

 本件では、スマホでチェックをすることで出退勤を管理するシステムを採用していたことで、出退勤管理が可能であって、報告がなされており、事業場外労働みなし制ではないと原告は主張しましたが、会社との関係では、上司は個別に訪問先を指定するなどの指示をしておらず、報告については週報という形で週に一度報告書を提出するが、その報告書の内容も詳細なものではなく、また、出退勤の時間のみが確認できるものであり、それ以外にどこでどのような労働をしているかはわからないシステムであった。このようなシステムでは、会社が具体的に業務内容を把握することは困難であり、労働時間を算定しがたいとしました。

 また、本件で原告は自宅で出退勤をチェックしており、そこから労働時間であると主張したが、自宅から労働時間を起算することは適切ではないとして、裁判所は事業場外労働みなし制の適用を認めています。今後は、リモートワークなどでこのような事業場外労働みなし制の採用が検討される可能性があります。
 

概要

 直行直帰の労働者の出退勤管理について、スマホで入力する方式を採用した事業所で、出退勤の時間と位置情報以外はわからず、また指示や報告も具体的なものではなかったとして、事業場外労働みなし制の適用を認めた事例


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