お問い合わせ

お知らせ お知らせ

BLOG & NEWS

2024.03.26
【判例】 育休明けの復職後の配置が給料が変わりないからとって自由に配置を行ってもいいのか?

事案の概要

控訴人はクレジットカード会社に平成20年に契約社員として入社し平成22年に正社員となり、平成26年1月よりチームリーダーとして勤務している。控訴人は平成22年8月より12月まで、その後平成27年7月より28年7月まで育児休業を取得した。
会社は組織変更を行い、平成28年1月に控訴人が所属していたチームを廃止し、新たに別チームを組織して、そのチームのチームリーダーに控訴人を配置した。しかし、このチームは控訴人一人であり、部下はいなかった。その後組織変更がさらに行われるなど、社内でのチーム体制に変化があった。平成29年3月の人事評価において、控訴人のリーダーシップ評価を最低とした。本件の措置が均等法9条3項及び育介法10条、公序良俗に反するとして提訴した。本件では損害賠償請求のみが審理されている。

判旨

「一般に、基本給や手当等の面において直ちに経済的な不利益を伴わない配置の変更であっても、業務の内容面において質が著しく低下し、将来のキャリア形成に影響を及ぼしかねないものについては、労働者に不利な影響をもたらす処遇に当たる」とし、部下のいない部署のリーダーとしたことに関して、「もっぱら控訴人に育児休業等による長期のブランクがあったことと、出産による育児の負担という事情を考慮したものというべき」と認定し、控訴人(一審原告)敗訴の判決を取り消して損害賠償請求を認容した。

解説

本件は、産休後復職した従業員を新規チームのチームリーダーにしたが部下を一人もつけず、また、副社長が面談時にチームリーダーは定時で帰宅できるような仕事ではないと発言していたことなどから、部下のいない部署のリーダーにすえることはチームリーダーとしての能力の評価が難しくなること等を考慮して不利益扱いとしたと考えられます。

復職後、基本給や手当が変わらないケース、職制上の階級などに変化がないケースであっても待遇が低下する場合は不利益扱いとなるという判断となっています。通常の人事異動のルーティーンに該当する場合は不利益な扱いとなりませんが、イレギュラーな異動の場合はその異動に積極的な理由があるかを確認し、説明できるようにしておかないと訴訟では不利になることもあり得ます。

本件ではチームの統廃合によりもともとチームリーダーをしていたチームがなくなったことは会社の経営判断で合理性があると判断されていますが、新規チームで部下を付けなかったことは問題といえます。

概要

産休後復職し、基本給や手当が変わらないとしても、人事異動により将来のキャリア形成に影響を及ぼしかねない部署への異動は不利益な扱いとして均等法9条3項、育介法10条に反し違法であるとされたことは重要視する必要があります。


【判例】 経営戦略室の課長でも管理監督者とはされず、残業代の支払いは必要か? 公開予定

【判例】 定年再雇用者の給与を引き下げることは、同一労働同一賃金に違反するのか? 公開予定

【判例】 正社員と期間の定めのある臨時職員との賞与の有無の差は不合理と言えるのか?  公開予定

【判例】 労働実態がほとんどない深夜帯の勤務について通常と異なる計算方法はできるのか 
【判例】 育休明けの復職後の配置が給料が変わりないからとって自由に配置を行ってもいいのか? 
【判例】 明確なパワハラ行為が会社であったことを放置し労災認定されたとき、それを安全配慮義務違反として会社に対しても損害賠償が認められるのか?
【判例】 有期雇用契約中に適性検査を行い、適性が認められないとして、契約更新を終了することは適用といえるか?
【判例】 労働契約法20条問題 平成29年3月23日
【判例】 ドリームエクスチェンジ事件 平成28年12月28日
【判例】 SGSジャパン事件 平成29年1月26日
【判例】 F堂事件
【判例】 有期雇用を相当程度繰り返してきた契約社員を、後から定めた更新上限を理由に雇止めとすることはできるのか?
【判例】 日本郵便(休職)事件 2018.6.20
【判例】 類似の働き方の正社員と嘱託社員の間で、労働条件の差を設けることはできるのか?同一労働同一賃金の違反にならないのか?
【判例 X学園事件 平成28年11月30日判決
【判例】 有期雇用の従業員を試用期間中のコミュニケーション不良で、試用期間満了後の解雇は有効となるか?
【判例】 高知県公立大学法人事件 2018.8.16
【判例】 スマホでできる勤怠管理システムを導入しているが、直行直帰の従業員を事業場外の見なし労働時間制を使うことは可能か?
【判例】 70時間を含む固定残業手当の制度は、有効なのか?固定残業制度の可否は?
【判例】 K運輸商事事件 2018.7.18 交通費の支給上限の可否
【判例】 定年後再雇用の方の給与について、年齢給部分をカットし給与が下がることは労働契約法20条の違反となるか?
【判例】 トラック運転手の残業代の計算方法の適法性が問われた事案。
【判例】 有給休暇の単価計算で、通常勤務した場合に支給される手当は有給単価に含まれるのか?
【判例】 定年退職後に嘱託社員となったが、給与について正社員と比べて低くするのは、労働契約法20条の違反となるのか?
【判例】 在職中に同僚に自分の新会社への転職を行うような引き抜き行為について損害賠償請求ができるのか?
【判例】 調整給として支給している固定残業代は、認められるのか?
【判例】 関西ケーズデンキ事件 2018.10.15

pagetop