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2024.04.10
【判例】 労働実態がほとんどない深夜帯の勤務について通常と異なる計算方法はできるのか

社会福祉法人A事件
千葉地方裁判所令和5年6月9日判決

事案の概要

本件法人は福祉サービスを業とする法人であり、グループホームを運営していた。原告はその法人に勤務していた。
勤務はシフト制で、原告は午後3時から9時まで、その後泊まりで翌朝午前6時から10時までの勤務であった。宿泊に関しては6000円の手当が支給されていた。
本件では宿泊時間が勤務時間に該当するか、そして時間外労働が認められた場合の割増賃金を基本給ベースで計算すべきと主張して本件となった。
 

判旨

労働時間性については労基法32条の労働時間とは労働者が使用者の指揮命令下におかれている時間をいうとし、これは客観的に指揮命令下にあると評価できるかによって決まるとし、知的障碍者のグループホームに勤務していた原告は、夜間であっても居住者の対応が必要となりうるから、労働時間に該当する、とした。
そして割増賃金については実労働が1時間に満たないときには夜勤手当以外支給しないという労働契約であったことから、午後9時から午前6時までの9時間のうち休憩時間1時間を除いた8時間で夜勤手当を割った750円が基準となるとした。
 

解説

本件は業務量が多いわけではない時間帯に就労場所にいることが勤務時間となるかという点がまず争点とされています。この点については最高裁が三菱重工長崎造船所事件などで示したように、使用者の指揮命令下にあるかを評価して決めることという基準によって労働時間であると判断されました。
本件での夜間勤務は、居住者には重度の知的障碍者もいることで介助等が必要であることから自分の意思でその場を離れることはできない以上、過去の判例に照らしてみても相当な判断なのではないでしょうか。

本件では、「1時間以内の業務しか発生しない場合には夜勤手当以外を支払わない」と規定されていたこと、居住者のほとんどが就寝していて介助が実際に必要になることはそうそうなかったこと、などから、もともとの業務量が少なく、待機しているとしてもかなり負荷が軽いという事情がありました。
そのため、基本給ではなく夜勤手当を基準とした時間外手当の支払いを裁判所は命じました。
居住者のほとんどが就寝している時間帯の労働と昼間の居住者の介助等を行っている労働が同程度のものとは評価できないとしたのが本件判決の特殊事情であると考えるでしょう。
また判決は労基法37条(割増賃金の計算)にも反しないとしています。これも夜間では労働の内容が異なることが理由でしょう。

一般的に考えてあまり業務が発生しないのにそれを基本給ベースで計算することには抵抗があるのはよくあることで、その点においては寛容な判断をした判決とおもいます。
この事件は控訴されているため、まだ確定したものとは言えません。東京高裁が逆の結論を出す可能性もあるので様子を見る必要があるでしょう。

なお、基準となる時間給が750円であり、本件事業所所在地の最低賃金に満たないことが別途問題となりますが、最低賃金はすべての労働時間に対して最低賃金以上の支払いを義務付けるものではないとされますので、1時間のみで計算せず、全体として最低賃金をクリアしていればいいとされています。
 

概要

午後から夜まで勤務し、翌朝からの勤務までの間を夜勤として夜勤手当が支給されている労働者に対しては、夜間の業務が少ないことからその間の時間外労働については基本給ではなく夜勤手当を基準として計算することを裁判所が認めたものですが、労働の実態と照らし合わせて慎重に対応する必要があるでしょう


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