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2024.03.01
【判例】 有期雇用契約中に適性検査を行い、適性が認められないとして、契約更新を終了することは適法といえるか?

東京地方裁判所令和5年2月8日判決

事案の概要

 原告(元従業員)は被告(明治安田生命保険相互会社)とアドバイザー見習候補者として労働契約を締結した。当該労働契約は最初の1か月をアドバイザー見習1期、その後の1か月を見習2期として1か月更新2回まで(1期2期合計で3か月)、とし、適性が認められないとした場合には契約を更新しないとしたものである。アドバイザーとしての採用条件(成績基準)は明確に定められている。なおアドバイザーとして採用された後は無期雇用契約とされている。

 本件では適性がないと会社が判断し契約の更新を拒絶したが、原告は無期雇用契約であると主張し、仮に無期雇用契約でないとしても採用に対する合理的な期待があり更新拒絶が不当であると主張した。

判旨

 「労働者の適性を把握するために有期労働契約を締結すること自体は許容されているところ、本件見習契約の期間においては、労働者の適性を評価することが予定されているとしても、さらには実態としてはほとんどの者がアドバイザーBに採用されるとしても、本件見習契約が当然に終了する旨の明確な合意が成立しているというべきであって、最高裁平成元年(イ)第854号同2年6月五日第三小法廷判決・民集第44巻4号668頁の射程は及ばないと解すべきである。」

 更新拒絶についても採用される合理的な期待はないとした。

解説

 本件では、アドバイザーとしての適性を判断するための期間が採用直後に設定されている雇用契約において、有期雇用契約としての合意があったと認められた事案です。
 採用に関しては試用期間を解約権留保付労働契約とする解釈が定着していますが、労働者の適性を見る期間を試用期間とみるか、それと異なる明確な目的(能力判定期間であり、採用試験の継続中とみるか)があるとするかが問題となりえます。
 ① 試用期間と解釈された場合は、無期労働契約が成立していることを前提として、解約権が会社に留保されていることとなり、解約権の行使が適切であるかが問題とされますが、 ② 有期労働契約と解釈される場合は期間満了により契約が終了することとなります。

 本件では、適性判定期間を試用期間とは異なるものとし、契約期間満了による契約終了を認めました。ただ、本件では保険のアドバイザーとしての採用のために、最初の1か月の、その後の2か月の成績の基準が明確となっていたことも判断に影響があったのではないかとおもわれます。営業成績による判断であり、契約者数など客観的な指数があったこと、その判断基準に合理性があったことが判断の要素とされていると考えられます。

概要

 保険会社において、新規採用者の適性の有無を判断したいとして1か月の有期契約を更新、上限を設定していた事例で、有期雇用契約が成立していたと判断されたもの。


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