お問い合わせ

お知らせ お知らせ

BLOG & NEWS

2023.12.01
【判例】 有期雇用の従業員を試用期間中のコミュニケーション不良で、試用期間満了後の解雇は有効となるか?

那覇地方裁判所令和元年11月18日決定

事案の概要

 Xは、学校法人Yに日本語講師として採用された。2年間の有期雇用契約であり、最初の3か月は試用期間とされていた。勝手に試験時期をずらしたり、就業時間内にボランティアに行ってしまったりという問題もあり、また、従来から行っていたランチタイムの学生とのミーティングも食事をしながら話したくないと述べて、打ち合わせそのものを終了させてしまうようなことがあった。
 Yはこういった態度をみて、他社とのコミュニケーションをとれるか、協調性があるか、などに不安があるとして試用期間を3か月延ばしてXにも改善を求めた。しかし改善されることなく、解雇と決定した。
 

判旨

 「学長が様々な角度から債権者のコミュニケーション上の問題点を伝えようとしているにも関わらず、債権者は自分の問題点を顧みる姿勢に乏しく、話し手の意図を正しく受け止められなかったり、言葉尻をとらえた反論に終始して論破しようとしたり、議論の前提を踏まえた会話ができなかったり、自身の意見に固執する姿勢が見て取れる。」学長や副学長は対応に苦慮していたが「債権者はそのことすら認識していたか疑わしい」
 「これらの問題点は、いずれも試用期間を経て初めて発覚しうるものである」として、改善の見込みはないと判断し、解雇を有効とした。
 

解説

 本件は、自分の意見だけをいい、情報の共有や、改善のための意見交換などの際に意見交換であれば必要な会話などの方法ができず、その後の議論や会話を止めてしまうような行動を続けていたものにたいする解雇の事案です。

 コミュニケーション能力に欠けるということで解雇したいと考えることは起こりえますが、それだけで解雇が有効となることは難しいえす。本件は日本語講師という特定の職種で採用しており、他の部署に異動させることは考えられない事案です。
 具体的な内容をみると、ランチミーティングについては食事をしながら話すのが嫌だというだけで、コミュニケーションというよりは拒否であったり、注意されているのに反論したり、など対話者の意図を汲むことができていない状況であったようです。
 本件は、このような問題があることは採用してからでないとわからないこと、試用期間を延長して本人に指導しようとしていたが、その間、かえって本人の対応が悪化していることなどから2年間の有期雇用であるとしても解雇はやむなしという判断となった。
 これは定かではないが、発達障害の可能性があったのではと思われる事案でもあります。特定の技能のための採用であった本件では解雇ができましたが、そうではなく通常の採用の場合は解雇が困難ででしょう。
 

概要

 他者とのコミュニケーションがうまくとれず、会話の方法などに問題があると指導したものの、反論や論破するなどと改善されなかったため、試用期間終了時にした解雇が有効とされた。
 


【判例】 経営戦略室の課長でも管理監督者とはされず、残業代の支払いは必要か? 公開予定

【判例】 定年再雇用者の給与を引き下げることは、同一労働同一賃金に違反するのか? 公開予定

【判例】 正社員と期間の定めのある臨時職員との賞与の有無の差は不合理と言えるのか?  公開予定

【判例】 労働実態がほとんどない深夜帯の勤務について通常と異なる計算方法はできるのか 
【判例】 育休明けの復職後の配置が給料が変わりないからとって自由に配置を行ってもいいのか? 
【判例】 明確なパワハラ行為が会社であったことを放置し労災認定されたとき、それを安全配慮義務違反として会社に対しても損害賠償が認められるのか?
【判例】 有期雇用契約中に適性検査を行い、適性が認められないとして、契約更新を終了することは適用といえるか?
【判例】 労働契約法20条問題 平成29年3月23日
【判例】 ドリームエクスチェンジ事件 平成28年12月28日
【判例】 SGSジャパン事件 平成29年1月26日
【判例】 F堂事件
【判例】 有期雇用を相当程度繰り返してきた契約社員を、後から定めた更新上限を理由に雇止めとすることはできるのか?
【判例】 日本郵便(休職)事件 2018.6.20
【判例】 類似の働き方の正社員と嘱託社員の間で、労働条件の差を設けることはできるのか?同一労働同一賃金の違反にならないのか?
【判例 X学園事件 平成28年11月30日判決
【判例】 有期雇用の従業員を試用期間中のコミュニケーション不良で、試用期間満了後の解雇は有効となるか?
【判例】 高知県公立大学法人事件 2018.8.16
【判例】 スマホでできる勤怠管理システムを導入しているが、直行直帰の従業員を事業場外の見なし労働時間制を使うことは可能か?
【判例】 70時間を含む固定残業手当の制度は、有効なのか?固定残業制度の可否は?
【判例】 K運輸商事事件 2018.7.18 交通費の支給上限の可否
【判例】 定年後再雇用の方の給与について、年齢給部分をカットし給与が下がることは労働契約法20条の違反となるか?
【判例】 トラック運転手の残業代の計算方法の適法性が問われた事案。
【判例】 有給休暇の単価計算で、通常勤務した場合に支給される手当は有給単価に含まれるのか?
【判例】 定年退職後に嘱託社員となったが、給与について正社員と比べて低くするのは、労働契約法20条の違反となるのか?
【判例】 在職中に同僚に自分の新会社への転職を行うような引き抜き行為について損害賠償請求ができるのか?
【判例】 調整給として支給している固定残業代は、認められるのか?
【判例】 関西ケーズデンキ事件 2018.10.15

pagetop