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2023.10.01
【判例】 関西ケーズデンキ事件 2018.10.15

事案の概要

原告らは、自死した元被告従業員Aの相続人である。Aは社内で禁止された値引をしたことなど 3 件の不適切な業務行為により注意書の提出を求められそれに従った。また、Aの夫の会社に卸は禁止されているのに多数のクリーナーを値引き販売しており、夫の会社はそれを転売していた。

そのため、レジ・販売業務に従事させるわけにはいかないとして、価格調査業務への配転の意向を示した。その翌日Aは自死した。そこでパワハラが原因であるとして原告らは被告ら(会社及び店長)を訴えた。
 

判旨

注意書を書かせた行為は、不適切な行為が存在していることから考えると適切な指導であり、パワハラではないとしてパワハラの成立を否定。そして、配置転換についてはもともと関連会社が行っていた調査を一人で担当させるという特異な内容であり「本件配置換えの結果、某Aに対して過重な内容の業務を強いることにな」るとして、配置換えの指示は「過重な内容の業務を強いることになり、この業務に強い忌避感を示す某Aに強い精神的苦痛を与えることになるとの認識に欠けるところはなかった」として不法行為の成立を認めなかった。

損害については自死との因果関係は否定し、配転を指示された精神的苦痛のみに損害の発生を認め、損害の一部を認容した。
 

解説

本件はやや特殊な事件だと思います。

もともと職務上禁止された行為を行った従業員に、その他にも問題が見つかったとして、 3 件の不正について注意書を提出させたという事案。

そして、小売業を行っており卸は行っていない販売店の商品を自分の配偶者の会社に対して値引きして販売し、転売の手助けをしていたなどの事情があるので、レジや販売の業務に配置したままではおけないという事情がありました。

しかし配転する適切な業務がなかったため、他店の価格調査という業務への配点を提示しました。

死亡したAさんは過去に他の家電量販店勤務の際に価格調査を行い他店の店員に囲まれたことがあったため、その業務だけはやりたくないと思っていたという事実が認定されています。

パワハラの主張自体無理があるもので、配転もやむを得ない状況であったが、解雇するまでの状況にはなかったようで、会社としては収入に大きな差がでないよう業務を調整したようにも思えます。

本件では、配転を指示した翌日に自死しており、調査業務を行ったストレスによって自死したとは考えられず(ストレスの蓄積があるとは思われない)、そのため、自死と配転の因果関係は否定されています
 


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記載の内容は、執筆当時の法律に基づきます。また、わかりやすく記載するため、例外についてあえて記載していないことがあります。また、一定の状況下・一定の条件のことを指していることがあり、すべての状況で同様のことが言えるわけではありませんので、ご了承ください。

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