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2023.10.17
【判例】 トラック運転手の残業代の計算方法の適法性が問われた事案。

事案の概要

熊本総合運輸事件 令和5年3月10日

トラック運転手として雇用されていた上告人が、賃金について就業規則が不利益に変更されたこと、および残業代の計算の基礎となる給与の計算が誤っているとして提訴した事案である。 もともと給与総額が決まっており、総額から基本給及び基本歩合給を引いた額を時間外手当とするとしていた給与規則を定めていた。 本件では、改訂後の就業規則は、基本給(各人別に定める)、基本歩合給(1日500円)、勤続手当(1日200円から1000円)、残業手当・深夜割増手当・休日出勤手当並びに調整手当からなる割増賃金を支給、宿泊手当2000円とするものとし、これらによって計算した金額を支給総額から引いたものが割増賃金とされる計算となっていた。
 

判旨

 「本件時間外手当の支払いにより労働基準法37条の割増賃金が支払われたものといえるか否かを検討するに当たっては、本件時間外手当と調整手当から成る本件割増賃金が、全体として時間外労働等に対する対価として支払われているか否かを問題とすべきこととなる。」として、就業規則の割増賃金には「通常の労働時間の賃金として支払われるべき部分をも相当含んでいる」と判断して原判決を違法とした
 

解説

 本件で、①基本給を決定して ②それに対して割増計算をして時間外手当等を支払うという基本的な計算をした場合、給与の支給総額を超過することもあるのに、支給総額を超えないように給与の内訳の名称を変更したのではないか、という点が問題だったとの補足意見があります。

 もともと固定残業代は労働時間による計算で出た金額を下回る場合には意味はなく、一時期流行したものの現在は注意しておかねばならないものです。

 本件では給与の内訳の名称とは異なり、基本給とそれ以外の明確な区分ができないとして差し戻しています。基本給が決まれば割増賃金も対応して決まってくるというためには、給与の内訳でも基本給(割増計算の基準となる数字)が明確であることが求められているといえるでしょう。

 会社の事務手続きとしては、総額を決めて支給した方が楽なケースもあり、時間外勤務が少ない企業では労働者にとって有利に見えたこともありますが、基本給として把握される部分が大きくなるだけという結論にもなりますので、注意をしたいところです。
 

概要

 給与総額から基本給等を引いた部分を時間外手当とする就業規則から、給与の内訳を明確化した就業規則に変更したが、結局は支給総額を決めてその内訳として時間外手当があり、支給総額を超えることがない就業規則を違法とした。


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