BLOG & NEWS
労務ブログ & ニュース
- ホーム
- 労務ブログ & ニュース
- 労務ブログ
- 【判例】 K運輸商事事件 2018.7.18 交通費の支給上限の可否
2023.11.01
【判例】 K運輸商事事件 2018.7.18 交通費の支給上限の可否
事案の概要
原告らは被告会社で期間の定めのある従業員として勤務していた。期間の定めのある従業員に対する通勤手当は期間の定めのない従業員(正社員)の半額とされていた。
このことから、通勤手当が正社員の半額であることは労働契約法20条に反するとして差額の支払を求めて訴えを提起した。
判旨
「本件相違に合理的な理由は見いだせず、通勤手当が被告に勤務する労働者の通勤のために要した交通費等を填補するものであることの性質等にかんがみれば」「職務内容の差異等を踏まえても、本件相違は不合理なものといわざるを得ない。したがって、本件相違は労働契約法20条に違反するものというべきである」
解説
本件は通勤手当の支給額の相違が労働契約法20条違反かが争われ、裁判所は合理的な差異ではないとして違反を認めた。
通勤手当を支給している会社は多いと思われるが、アルバイトやパートに対しては正社員と異なる扱いをしている会社も少なくないと思われる。
本件で会社は名称は通勤手当であるが、3回欠勤したら不支給としており、実質は皆勤手当てであるとも主張したが裁判所はこれを認めなかった。
労働法的に見た場合、通勤手当は支給が義務とは言えないものです。労務の提供のために通勤することは当然のことで、交通費は法的には労働者負担であるとすることも不可能ではありません。
税務上の扱いは少額非課税ということで所得税が課税されていないということを考えると、差異を設けることが違法だと言い切れるのかは疑問があるところではありますが、通勤手当が支払われることが当然とされていること、求人において支給すると示すことが有益であること、などを考えると上限を定めて支給するという扱いに合理性があります。
これからはこの判例によらずとも働き方改革による同一労働同一賃金の性質から考えて、交通費について、支給要件を変国することはできなくなると考えます。
判例に関する記事一覧
【判例】 脳出血による死亡は労災認定されるのか?
【判例】 経営戦略室の課長でも管理監督者とはされず、残業代の支払いは必要か?
【判例】 定年再雇用者の給与を引き下げることは、同一労働同一賃金に違反するのか?
【判例】 正社員と期間の定めのある臨時職員との賞与の有無の差は不合理と言えるのか?
【判例】 労働実態がほとんどない深夜帯の勤務について通常と異なる計算方法はできるのか
【判例】 育休明けの復職後の配置が給料が変わりないからとって自由に配置を行ってもいいのか?
【判例】 明確なパワハラ行為が会社であったことを放置し労災認定されたとき、それを安全配慮義務違反として会社に対しても損害賠償が認められるのか?
【判例】 有期雇用契約中に適性検査を行い、適性が認められないとして、契約更新を終了することは適用といえるか?
【判例】 労働契約法20条問題 平成29年3月23日
【判例】 ドリームエクスチェンジ事件 平成28年12月28日
【判例】 SGSジャパン事件 平成29年1月26日
【判例】 F堂事件
【判例】 有期雇用を相当程度繰り返してきた契約社員を、後から定めた更新上限を理由に雇止めとすることはできるのか?
【判例】 日本郵便(休職)事件 2018.6.20
【判例】 類似の働き方の正社員と嘱託社員の間で、労働条件の差を設けることはできるのか?同一労働同一賃金の違反にならないのか?
【判例 X学園事件 平成28年11月30日判決
【判例】 有期雇用の従業員を試用期間中のコミュニケーション不良で、試用期間満了後の解雇は有効となるか?
【判例】 高知県公立大学法人事件 2018.8.16
【判例】 スマホでできる勤怠管理システムを導入しているが、直行直帰の従業員を事業場外の見なし労働時間制を使うことは可能か?
【判例】 70時間を含む固定残業手当の制度は、有効なのか?固定残業制度の可否は?
【判例】 K運輸商事事件 2018.7.18 交通費の支給上限の可否
【判例】 定年後再雇用の方の給与について、年齢給部分をカットし給与が下がることは労働契約法20条の違反となるか?
【判例】 トラック運転手の残業代の計算方法の適法性が問われた事案。
【判例】 有給休暇の単価計算で、通常勤務した場合に支給される手当は有給単価に含まれるのか?
【判例】 定年退職後に嘱託社員となったが、給与について正社員と比べて低くするのは、労働契約法20条の違反となるのか?
【判例】 在職中に同僚に自分の新会社への転職を行うような引き抜き行為について損害賠償請求ができるのか?
【判例】 調整給として支給している固定残業代は、認められるのか?
【判例】 関西ケーズデンキ事件 2018.10.15