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2024.10.24
【判例】 脳出血による死亡は労災認定されるのか?


福岡高等裁判所令和5年9月26日判決
事案の概要
亡AはB株式会社に平成3年4月1日に入社し平成26年4月3日に脳出血を発症し入院加療していたが平成28年3月24日に死亡した。
亡Bの相続人(一審原告、控訴人)は労災保険法に基づき遺族補償給付の請求をしたが、岡山労働基準監督署長は不支給とする処分をした。
審査請求、再審査請求ともに棄却されたため、国に対して処分取り消しを求め提訴した。一審は原告の請求を棄却したため、控訴したのが本件である。
判旨
「発症1か月前97時間58分、2か月前50時間13分、3か月前94時間06分、4か月前82時間11分、5か月前94時間06分、6か月前はほぼ100時間に及んでいた」と時間外労働について認定し、発症9日前にトラブル対応という突発的な事象対応で18時間01分に及ぶ長時間労働があったこと、その他、飲酒の習慣がないこと、たばこについても平成25年4月頃から禁煙していたこと、健康診断で血圧について注意されていたが、数値が少し上回る程度であったこと、本件疾病発症前6か月は週に2日以上の休暇を連続して取得していたことなどを考慮しても「業務に内在する危険が現実化したことによるものと認めることができる」として控訴を認容した。
解説
令和3年9月改訂の脳・心疾患の認定基準では、労働時間以外の要素も考慮することができるようになり、認定基準は従前より広くなった。実際の認定においては、行政庁である労基署と司法機関である裁判所では異なった扱いを受けている。
裁判所では、法に基づく裁判が行われるのであり、認定基準は内部の通達であるとされ、裁判所を拘束するものではないとされる。もともと、裁判所は事案の妥当な解決を求める傾向にあり、そのために法解釈を行い妥当な結論を出そうとする。裁判所を縛るものが法であり、解釈として可能な範囲であれば法を適用していく。法解釈の技法があるがその中でも拡張解釈や類推解釈などの相当無理な解釈を行うのはそのための技法である(法学を学ぶ際にこれらの解釈手法が理解しにくいのは仕方ない面がある。それは結論から引き戻して法解釈をするからである)。
本件では、飲酒をすることがあっても懇親会などに限られそれ以外は飲酒をしていなかったこと、喫煙も過去には1日に10本以下の喫煙習慣があったが、禁煙して時間が経っていること、血圧が高いと言われたことがあるが、数値が少し上回るだけであったことなどを認定し、業務以外の原因がないことから業務起因性を認定した。消去法で業務しか残らないという認定と考えられる。
過労死ラインといわれる発症6か月前の平均時間外労働時間が80時間という量的な基準は、解釈の幅がないものは、法解釈の権限を持たない行政庁では使いやすい。そのため柔軟な対応がしづらい(これをお役所仕事などと批判するのはたやすいが、自由に役所が対応してしまうと法の存在が脅かされる)。
概要
平成26年4月3日に脳出血を発症し平成28年3月24日に死亡したBの相続人が遺族補償給付を求めたが労基署では認められなかったため処分取消を求めた事案で、控訴審では労働時間のみならず普段の生活状況なども含めて判断し、業務起因性を認めた。
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