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2025.09.12
【判例】合併による新たに新設された事業所への配置転換は認められるのか?


福岡地方裁判所小倉支部令和5年9月19日判決
事案の概要
被告法人Aは、教育機関を運営する学校法人であり、中学・高校、幼稚園などを設置してきた。その後他の市で運営されていた他の学校法人を吸収合併し、存続法人は被告法人となり新法人Bは令和5年4月3日に設立された。
原告は消滅した法人に勤務していた講師である。原告は平成29年8月22日に解雇されたが、その後解雇が無効であることが確定している。被告Aは令和3年10月16日に原告に対して配転命令を行い、学校Cでの勤務を命じた。原告は労働契約は勤務地限定契約であると主張して配転命令の効力を争った。
判旨
「学校法人の合併や学校の新設などに伴い、採用時に存在しなかった新たな職場で勤務する可能性が事後的に生ずることは、一般的にあり得ることである上、被告Aの本件学校における就業規則には、業務の都合による配置転換等の異動に関する定めがあり、原告は消滅法人に対し、配置換えや勤務場所の変更があっても異議がない旨記載された誓約書を提出している。」という事実などを認定し「原告の勤務地を限定することを承諾する意思表示がなされた事実を推認するには足りない。」として主張を認めなかった。
解説
勤務地や職種を限定する契約が問題となることはままあり得る。特に本件は法人が合併したことにより勤務先となる場所が増え、その各場所への人員配置を考えた場合に当初予定しなかった場所への勤務や職種変更が起きることがある。
本件ではもともとトラブルがあった従業員との間の紛争であることが特徴的であるが、それ以外の一般論としての勤務地等の限定契約の効力を考えることができるケースである。
もともと複数の拠点を持っている企業は必ずしも多くはない。しかし、経済的な問題や経営の合理化などにより、合併等が行われることも多い。不況の中では今までの単独の企業では経営が困難となったとしての合併などもあり得る。
その場合、合併とともにリストラを行うこともあり、配置転換という形で退職を促すケースも出てくることが予想される。
本件ではもともと勤務先となる学校の数が多いわけではなかった。ただし、合併などに関して採用時に予想できなかった勤務先ができることがある。本件で裁判所は事後的に勤務先が増えることは一般的にあり得ると判示している。こういったケースでは勤務地限定契約が仮にあったとしても、必要性や合理性で勤務先の変更が認められる可能性はある。管理職が必要であるなどの状況で、適任者が他にいないなどの事情をきちんと説明できるように固めておくことが重要となる。会社によっては資格や等級などが規定されており、役職に対して必要な資格が決められているところもあり、そういったものがあれば説明もしやすくなる。また、業務の都合による配置転換がありうることが就業規則にも定められていたこと、勤務地を限定する契約と認められるような事情がなかったことが指摘されている。勤務地限定契約と明記されていなくても、採用時の事情などで限定契約を解釈されることはあるので注意は必要である(介護の必要などを話し合ったうえでの採用だと限定と解釈される可能性はある)。裁判所は一般論としての勤務先の増加の可能性と明確に勤務地を限定していなかったことを指摘して判断をしている。
なお、本件ではもともと紛争があった労働者に対する配置転換であって報復的になされたのではということから、配置転換は権利濫用であり無効としたことを付け加えておく。
概要
勤務先の学校が吸収合併されて、新たに他の校舎・学校という勤務先が増加したことなどから、配置転換で他の学校に異動を命じられた。勤務地限定契約を主張したが、合併などで勤務先が変化することはありうるとして勤務地限定契約とは認めなかった。
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